ワンモア・ベイビー・ラボ
朝食を食べないことが月経痛の原因に!?~朝食欠食と月経困難症の関係性~
齊藤英和
2026年07月28日
先回の記事では、朝食欠食が体のいろいろな臓器の日内変動に影響しており、体外受精の成績にも影響を及ぼすことを解説しました。今回は、不妊治療をされている方だけに限らず、多くの方が悩んでいる疾患である『月経困難症と朝食欠食との関連』について研究した報告についてお話しましょう。
月経時に下腹部の痛みを感じ、その痛みが強い場合は仕事にも影響を及ぼしますので、皆さんにとってはとても身近な疾患だと思います。この研究は先回の研究の共同著者である、藤原先生の研究です(Fujiwara T, et al. Diagnostics (Basel). 2020 Jul 13;10(7):476. doi: 10.3390/diagnostics10070476.)。
若年期における不適切な食行動は、成人期の生活習慣病発症リスクを高めることが報告されています。若年成人では エネルギー摂取の不足や食事摂取のタイミングの不適切さが現在の栄養上の問題と考えられています。特に、大学生活を開始した多くの学生や社会人一年目の方は、一人暮らしを始める方も多く、食習慣が乱れやすく、例えば若年成人では、欠食やダイエットの割合が高いことが報告されています。
一方で、過度なダイエットは月経困難症、月経不順、視床下部性無月経などの婦人科疾患を誘発することが広く認識されてきており、さらに最近では、月経困難症を伴うことが多い子宮内膜症が、現代の食生活の結果として発症している可能性も示されており、婦人科疾患が食習慣と密接に関連していると考えられています。
女子学生3,172名に対して行った調査の概要
この研究の対象者は、金沢大学に在籍する18~25歳の日本人女性で、学年の初めに学生の健康状態、および生活習慣の状況を把握し、学内での健康支援および生活改善に役立てることを目的として、アンケートによる年次調査を実施しています。参加者総数は3,172名であり、そのうち 統計解析に適した完全回答を得た女子学生は3,110名でした。欠食やダイエット歴などの食習慣と、月経に関する悩み・不安、月経不順、月経痛、経口避妊薬の使用といった月経異常との関連を分析しています。
朝食・昼食・夕食に関する簡易食物摂取頻度質問票を使用し、すべての参加者を①毎日朝食を食べる ②ときどき朝食を食べる ③朝食を食べないの 3群に分類しています。
ダイエット歴は、1か月の間に 3 kg 以上の体重減少を経験した者を「ダイエット歴あり」と定義し、この項目を調査票に追加しています。 すべての参加者を、①ダイエット歴なし ②ダイエット歴あり の 2 群に分類しています。さらにダイエット歴ありの群を①現在ダイエット中 ②18歳以前にダイエットした ③18歳以降にダイエットした の3群に細分しています。
月経異常については、月経に関する悩み・不安、月経不順、月経痛、経口避妊薬の使用状況について調査しています。
統計解析においては、Kruskal–Wallis検定、Mann–Whitney検定、カイ二乗検定およびRyan法(事後検定)で解析しています。
さらに、潜在的交絡因子を調整するためにロジスティック回帰分析を行っています。
研究結果について
この結果ですが、
朝食の欠食状況は、(毎日食べる):2101 名(67.56%)、(ときどき食べる):881 名(28.33%)、(食べない):128 名(4.12%)でした※グラフ1。
昼食の欠食状況は、(毎日食べる):2936 名(94.41%)、(ときどき食べる)173 名(5.56%)、(食べない):1 名(0.03%) でした※グラフ2。
夕食の欠食状況は、(毎日食べる):2917 名(93.79%)、(ときどき食べる):191 名(6.14%)、(食べない):2 名(0.06%) でした※グラフ3。
ダイエット歴の有無については、(ダイエット歴なし):2919 名(93.86%)、(ダイエット歴あり):191 名(6.14%)でした※グラフ4。
(ダイエット歴あり)のうち、24 名(12.57%)はその後のサブ質問に無回答でしたが、(ダイエット歴あり)167名をさらに細分すると、(現在ダイエット中):12 名(7.196.28%)、(18歳以前にダイエット):82 名(49.142.93%)、(18歳以降にダイエット):73 名(43.7138.22%) でした。※グラフ5
月経に関する悩み・不安を抱える学生は 549 名(17.65%)、悩み・不安のない学生は 2561 名(82.35%) であり、※グラフ6
朝食・昼食・夕食の欠食群を「毎日食べる群」と「毎日食べない群」の 2 群に分類して比較したところ、朝食欠食、昼食欠食のある学生では、月経に関する悩み・不安の発生率が 有意に高値を示しました(それぞれ p < 0.01、p < 0.05、カイ二乗検定)。 一方、夕食欠食では有意差は認められませんでした。
また、ダイエット歴のある群では、月経の悩み・不安の発生率が有意に高値でした(カイ二乗検定、p < 0.001)。
月経不順では、月経不順と欠食、またはダイエット歴との間に有意な関連は認められませんでした。
月経痛では、(痛みなし):683 名(20.82%)、(痛いが鎮痛剤なしで耐えられる):1214 名(39.61%)、(鎮痛剤が必要):1157 名(37.75%)、(鎮痛剤を使用しても痛みが軽減しない):56 名(1.83%)であり、朝食欠食と月経痛には有意な関連が認められました(p < 0.001)。※グラフ7
一方、昼食欠食、夕食欠食 との間には有意な関連は認められませんでした。
また、月経痛とダイエット歴にも有意な関連は認められませんでした。
さらに、食習慣を「毎日食べる」群と「毎日食べない」群の2群に再分類してロジスティック回帰分析を行ったところ、同様の結果が得られました。
経口避妊薬の使用者は 140 名(4.5%)で、その内訳は月経周期の調整目的:59 名(42.14%)、月経痛の改善目的:56 名(40.00%)、その他の理由:25 名(17.86%)でした。※グラフ8
ダイエット歴と経口避妊薬の使用には有意な関連が認められました(p <0.001)。
一方、欠食と経口避妊薬使用との間には、有意な関連は認められませんでした。
調査を通じて分かった朝食の重要性
この調査により、朝食欠食と月経に関する悩み・不安や月経痛の発生率には、正の関連性(p < 0.001)が確認され、朝食欠食が卵巣および子宮機能に影響を及ぼす可能性があります。
また、月経困難症は、学校生活や職場において重要な影響を及ぼす疾患であることから、朝食欠食は婦人科疾患の将来的な発症を予測する優れた指標となり得ると考えられます。
さらに、欠食は知識取得により改善可能であることを踏まえると、朝食欠食は予防可能な疾患の予測因子であり、月経異常の予防に寄与する可能性があります。
皆さんも、食事をとることの意義についてもう一度じっくり考えてみてください。









