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【パパ育休の実態と本音】2人目以降を見据えた育休取得。小学校教員が見つめた、家族と仕事のあいだの新しい景色」=後編=

秋山 開 2026年07月10日

朝だったのに、気づけば夜。育休中の1日はとてもシンプルだった

育休中の1日について聞くと、大介さんは「朝は2パターンあります」と笑いました。
ひとつは、ゆっくり始まる日。もうひとつは、まだ暗いうちから起きて自分の時間を先に確保する日です。

ゆっくりする日は、朝8時ごろに家族3人で起きるところから始まります。

朝ごはんを食べて、遊んで、また食べて、遊んで。娘さんが一人遊びをしてくれる時間も少しずつ増えてきたため、その合間に家事を分担する。午後は子ども服やおもちゃ、絵本などの買い物に出かけることもあるそうです。

「ほんまに、めちゃくちゃ簡単なリズムで進んでいってる感じですね。食べて遊んで、食べて遊んで、という感じです」

一方で、もうひとつのパターンはかなり早い。

ビーチラグビーやマラソンを続けてきた大介さんは、いまでもトレーニングを欠かしません。そういう日は、朝3時台に起きてジムに向かい、7時ごろまでに帰宅。そこから離乳食の準備や掃除、カーテンを開けるなど、朝の家事も済ませてしまうのだといいます。

「自分がやりたいことは、自分しか起きてない時間でやる、というふうに決めています。家族の生活を変えるようなことはしたくないので」

ただ、どちらのパターンでも、その後に始まる育児の流れは同じです。

娘さん中心のリズムに合わせながら、日々を過ごしていく。その意味では、とてもシンプルな毎日だといえるのかもしれません。

家事・育児は全部できる。そのうえで「0から1」は妻、「1から10」は自分

永崎さんご夫妻の家事分担は、「これとこれは必ず誰」と細かく決まっているわけではありません。もともと結婚前から一緒に家事をしてきたこともあり、「どちらも一通りできる」が前提になっています。

料理も、お互いが「今日はこれ作るわ」と動ける。洗濯も掃除も、基本的にはその延長線上です。

ただ、そのなかでも得意不得意ははっきりしていると大介さんは言います。

「基本的に全部できるとしても、できるレベルが違うので。妻のほうが基本的には全部できるんですけど、めちゃくちゃ頑張っても楽しくないこともお互いにあるから、そういうやりたくないことはお互いでサポートし合う感じです」

そのなかで、二人のあいだでは、「0から1」と「1から10」という分け方が自然とできていきました。

たとえば離乳食。何をつくるか考え、まとめて準備するという最初の部分は朱里さんが担う。一方で、それを解凍して出す、今日はどの組み合わせにするか考える、実際に食べさせる、といった日々の運用は大介さんが担う。そんな分担です。

「0から1の、ちょっと腰が重くなるところはお願いして、そこから広げるのは自分、みたいな感じですね」

夜中に起きることも、「一緒にする」と決めた

生まれてきた子は比較的よく眠るタイプで、夜泣きに悩まされ続けたわけではなかったといいます。

ただ、生後3カ月ごろまでは授乳のために何時間かおきに起きる生活が続きました。

そのとき、大介さんは「授乳はできないけれど、一緒に起きる」という選択をしていました。

「基本的に子どもが泣いていても全然気づけなかったんですけど、毎回起こしてもらって、授乳の時間はずっと一緒に起きていました」

とはいえ、できることがたくさんあるわけではありません。
隣で見守りながら、なぜ3時間ごとに起きるのか、どういうサポートができるのかを調べる。そうした時間だったそうです。実際に何ができるのか、ここでもAIに壁打ちをして、対処法を見出していったこともあったようです。

「自分の中では、一緒に何でもしていくっていうことを何より大事にしたかったんです」

この部分について、大介さんはとても印象的なことを話してくれました。

たとえば「片方が起きていれば十分で、もう片方は寝て体力を残すべきだ」という考え方もある。実際、自分も以前はそういう理屈に納得するタイプだったといいます。

けれど今回は、あえて違う選択をしました。

「一緒に乗り越えてきたかどうかって、“起きてる・起きてない”だけでもすごい差があるなって思って。苦しいんですけど、そのとき一緒に起きていたからこそ、今『あのとき一緒に頑張ったね』って話もできるので」

そこには、正解がひとつではないことを受け止めたうえで、「自分たちはこうしたい」と選び取った感覚があります。

「気づき」が多かった育休の日々と言える理由

育児でいちばん大変だったことは何か。そう聞くと、大介さんは少し考えたあと、「ないんですよね」と答えました。

もちろん、何もかも楽だったわけではありません。ただ、自分のなかでは「大変だった」というより、「気づきのほうが多かった」と感じているのだそうです。

「小学校1年生から6年生まで担任してきましたし、子どもと関わるのはすごく好きですし、仮説を立てて検証していくのも好きなんです。なんで今泣いてるんやろう、お腹減ってるんかな、おむつなんかな、と考えるのも、自分のなかでは大変さより気づきのほうが多かったです」

それに加えて、周囲の支えもありました。

朱里さんの実家が近く、土日は実家で食事やお風呂を済ませることも多いのだとか。大介さんはときどきスポーツの試合や大会に出ることもあるそうですが、その支えがあったからこそ家庭が回ったといいます。

「大変になるところを、周りの人がいい具合でサポートしてくれてるなっていうのは感謝しています」

つまり、「大変だったことがない」のではなく、「大変さが深刻になる前に、夫婦や家族、周囲の人との関係が受け止めてくれていた」と言えるのかもしれません。

旅行よりも、日常がいちばん楽しい

育休中にうれしかったことを尋ねると、娘さんの成長を妻と一緒に見られたことを何より大きく挙げていました。

寝返りをする。ハイハイをする。声を出す。そうしたひとつひとつの変化はもちろんうれしい。けれど、それ以上に、その瞬間を妻と共有できたことが大きかったといいます。

「この約1年が、僕たち夫婦のいい思い出、共有できる財産になったなっていうのはすごく思います」

家族で香川県へ旅行にも行ったそうです。けれど、だからといって非日常が特別に大事というわけではない。むしろ、日々の暮らしのほうが自分たちにはしっくりくるのだと話します。

「旅行ももちろん楽しいんですけど、自分の中では非日常より日常を楽しくできるほうが幸せやなと思っているので。もうこの1日1日を、健康で笑顔いっぱいで過ごせたら、それが何よりかなと思っています」

この言葉は、永崎さん家族の雰囲気をよく表しているように感じました。

夫婦で決めていること。「言わない」がいちばんだめ

育児中、まったく衝突がないわけではありません。むしろ、大介さんは「めっちゃあります」とはっきり言います。

「自分がいろいろ考えて言うから、やっぱりイラッとすることもあるし、それを伝えちゃうこともあるし。でも、“伝えない”が一番悪いと思ってる部分はありますね」

永崎さん夫婦のあいだには、いくつかのルールがあります。

ひとつは、「子どもの前では喧嘩しない」。もうひとつは、「嫌なことは“言わなかった人”が悪い」という考え方。ため込んで最後に爆発するのではなく、小さいうちに言葉にすることを大事にしてきました。

そして何より大事にしているのは、「まず謝る」こと。

「基本的にはどっちも悪いんですよ。たとえ妻が99悪いとしても、自分にも1の非はあるので、まず謝る。そうしたほうが、そのあと会話できると思っています」

“正しさ”や“正義”をぶつけ合うのではなく、また笑って過ごせるところに戻るために、言葉を選ぶ。
その姿勢もまた、この1年で2人が育ててきたものなのかもしれません。

4月からの復帰、そしてこれから

4月からは、いよいよ職場復帰です。今年度は異動直後の学校で、そのまま育休に入ったため、「また一からの気持ち」と話していました。

それでも、この経験が仕事に活きるだろうという感覚ははっきりあります。

「まず、立ちふるまいが変わるやろうなっていうのがひとつ。あと、保護者の気持ちが少しわかるようになったこと。仕事は大事ですけど、何よりも大事なのは自分が大切やなと。そこを大事にすることでまわりも大事にできるっていうことにも気づけたかなと思います」

若手教員が増えていくなかで、自分が気づいた考え方やフレームを、少しずつ還元していきたい。そんな思いもあるようです。

「学校現場って、がむしゃらに頑張るだけではしんどいことがたくさんあると思うので。そういうときに、自分が気づいたことをまわりに返していけたらなと思っています」

最後に、これから育休を取ろうとしている人へのメッセージを聞くと、こんな答えが返ってきました。

「自分は後押しとか、あんまり得意ではなくて。その人が取りたいと思ったら、たぶんまわりの人が『取ったらいいよ』って声をかけてくれるし、自分を信じてやりたいことをやったり、突き進んでほしいなと思います」

その言葉は静かですが、どこか力があります。

自分の選択に責任を持ち、周囲への感謝も忘れずに、でも最後は自分で決める。そんな大介さんの姿勢が、そのまま表れているようでした。

育休を通して家族と過ごした約1年は、仕事から離れた時間であると同時に、これからの仕事や生き方を見つめ直す時間でもあったのでしょう。

日常を大事にしながら、家族3人で笑って過ごすこと。その経験が、きっとこの先の働き方や、周囲へのまなざしにもつながっていくはずです。

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