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「LOVEではなくLIKE」。離婚後も協力して子育てを行う〝コ・アウデルスハップ〟を選択した元夫婦の話/オランダ・インタビュー vol.10

秋山 開 2025年12月19日

「世界一子どもが幸せな国」といわれるオランダ。これはユニセフのリポートによるものです。さらにオックスフォード大学ウェルビーイング研究所が主導するWorld Happiness Report(世界幸福度報告)の2025年版でも、オランダは第5位に入っています。ちなみに、日本は同ランキングで55位です。

1more Baby応援団では、このように幸福度が高いオランダの社会や暮らしを探るべく、2016年より定期的な調査を行っています。その調査内容は、『18時に帰る』という書籍として1冊にまとめたほか、インタビュー記事等を本ブログでも掲載してきました。

Vol.7~10では現地在住者の協力のもと、オンラインを通じて2つの子育て家庭に伺ったお話をご紹介していきたいと思います。
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vol.9~10ではマライエさん(35歳)のインタビューを紹介します。人口約3万人の学園都市に住む彼女には、9歳と7歳になるお子さんがいます。また、約2年前には離婚を経験していますが、元パートナーのデニスさん(43歳)は、同じ街に住んでおり、今でも協力し合いながら子育てをしています。

マライエさんはオーガニック食品を扱うスーパーマーケットの店舗デザイナーとして週3日勤務をしています。一方のデニスさんは大学の本部スタッフとして週3.5日勤務をしています。

「離婚後やパートナーシップを解消した後に、お父さんとお母さんが一緒に子育てをすることをco-ouderschap(コ・アウデルスハップ=共同養育)と呼びますが、オランダではとてもよくあることです」と話すマライエさん。共同親権は日本でも2026年に導入される予定となっていますが、オランダで広く見られるようになったのは2009年ごろと、20年以上の歴史を持ちます。

後編(vo.10)では、離婚(パートナーシップ解消)後に、co-ouderschapで子育てをしながら働くマライエさんに詳しいお話をうかがっていきます。子どもたちに「LOVEではなくLIKEなんだよ」と説明していると言いますが、具体的にはどういった関係性なのでしょうか。

離婚後は共同養育・共同親権を選択。週ごとに子育てを交代している

─プライベートな話になりますが、2年前に離婚され、別々の家で暮らしているということで合っていますか?

「はい。2021年の12月に私たちは離れました。一緒に住んでいた家には彼が残り、私は新しい家に移りました」

─事前に書いていただいたアンケートによりますと、マライエさんが子育てをする週とデニスさんが子育てをする週が交互にあって、1週間ごとに交代で面倒をみているということでした。このあたりのことを少し詳しく教えてください。

「私だけでなく、デニスも週4日勤務(現在は3.5日勤務)のパートタイムで働いていましたし、2人とも同じぐらい子育てをやりたいという意欲をもっていました。オランダでは珍しくないことで、co-ouderschap(コ・アウデルスハップ=共同養育)ともいいます。別れたお母さんとお父さんが一緒に子育てをするという意味合いですけれども、基本的には1週間(7日間)のうち、子どもを預かる期間を4日間と3日間で分けるか、3.5日ずつで分けます。その割合のなかだったらco-ouderschapの範囲に入るとされ、共同親権が認められます。私とデニスの場合、それを1週間ごとに交代で見るというやり方を取っています。子育ての時間だけでなく、子育てにかかるお金の負担も半分ずつが基本です」

─実務上、別れたパートナーともかなり頻繁に会うことになりますよね。オランダでは一般的なことなのでしょうか?

「少なくないと思います。私たちの場合ですが、幸いにも離婚後も関係性はよく、一緒に食事をしたり、一緒にどこかへ出かけたりすることもあります。一緒にお誕生日会を祝うこともあります。子育てに関する話し合いが必要な場合にも、それがしやすい環境にあるといえます。話し合う関係ができているから、たとえば今週末は◯◯のイベントに行きたいから、次の週と替わってほしいとフレキシブルな対応をし合うことができます」

離婚時には「子どもがタトゥをしたいと言ってきたらどうするか」まで決めておく

─そういったお金や時間の取り決めは離婚したり、パートナーシップを解消したりするときに、契約書を結ぶのでしょうか?

「オランダでは、子どもがいれば、裁判官の承諾がないと離婚ができません。私の認識では、子どもがいる場合は2種類の書類を準備しないといけません。1つは親同士の離婚に関するもの。たとえば、ピアノやベッドは誰が持っていくのか、資産はどうするのかといった書類です。もう1つは子どもたちに関する今後のプラン(ouders­chapsplan)。これはすごく分厚い書類になります。もう今後のすべてがリストアップされています。お金や養育時間にかんすることはもちろん、たとえば10歳のクリスマスは誰と過ごすのか、誕生日会はどうするのかといったことから、仮に子どもが大きくなってきて、タトゥをしたいと言ってきたら、親としてどうするかといったことまで決めておくことになります」

「幸い、私たちはわりと近い価値観を持っているので、そのあたりはスムーズに決めていくことができました。お金に関しては、私たちの場合はほとんど同じ収入だったので問題にならなかったんですけれども、どちらかの収入が多い場合があります。その場合は、収入が多いほうが、相手側にお金を振り込むケースもあります」

─ただ、マライエさんとデニスさんの場合、働く時間が1日分異なりますよね? その場合でも、養育費の負担は同じなのでしょうか?

「確かに私は週3日しか仕事をしていなくて、彼は週4日仕事をしていました。だから彼の収入のほうが高かったのは確かです。だから記憶をたどると、確か私には月60ユーロをもらえる権利があったはずです。でも、私は自分で週3日勤務を選んでいましたので、そのお金をもらうのはフェアじゃないと思ったんです。だからルール上はもらえるんですけど、〝なし〟ということにしました」

契約した子育てプランの変更は話し合いで解決している

─新しいパートナーができてもその契約は継続されるのでしょうか。

「新しいパートナーができても契約やプランは変わりません。法律的には子どもたちが18歳になるまでです。一度決めた契約やプランは彼らが18歳になるまでは変わらないけれど、1年に1回までは、何か内容を変えたい場合には、その権利があります」

「たとえば、今年のクリスマスは、プラン上は私と過ごすことになっていても、デニスがスキーに連れて行きたいからクリスマスは子どもたちと出かけたいと言うかもしれない。そういうことを権利があるからといって、いちいち裁判所に行って内容を変えてもらうかというと、やはり手間はかかるし、弁護士費用もかかります。だから、そのあたりの細かなところは話し合いで解決しています。先ほども言いましたけど、幸いにも私たちは関係性が良好なので、問題になることはありません」

─弁護士費用ですか……。確かにすごくお高そうですね。

「もちろん高いです。離婚するにはお金がかかるんですよ。私たちは収入が高くないので、国から助成金がもらえたんですけれども、高い収入の人たちが離婚したい場合、数千ユーロ単位でかかったりします。とにかく資料をつくるのが大変。私たちはできるところは自分たちでやりましたが、どうしても弁護士に手伝ってもらわないといけない部分もあって、確か10時間ぐらい弁護士さんに手を動かしてもらいました。時給80ユーロだったので、約800ユーロがかかりました。それ以外にも、裁判所に行くのにもお金がかかるし、本当に大変でした」

見出し#女性が自立し、誰かに依存しなくても生きていける社会に変わった

─子育てに関する分厚い資料を用意しないといけないことを筆頭に、システムがしっかりと機能しているように感じました。それにもかかわらず、オランダのパパやママは柔軟性をもち、幸せそうに暮らしているように見えます。実際、いろいろなランキングで幸せだと言われていますよね。なぜだと思われますか?

「なぜ幸せでいられるかと聞かれましたけれど、逆になぜ不幸じゃないといけないんでしょうか(笑)。真面目に答えると、ヨーロッパの文化的な背景は影響しているかもしれません。ヨーロッパでは女性が自立していて、誰かに依存しないと生きていけないということがあまりありません。仮に離婚やパートナーシップを解消したとしても、それを不自由に思うことはないというか、むしろより良く生きるための選択をしたわけですから、前向きな決断ですよね」

「繰り返しになりますが、私たちの場合、それは決して例外的ではないと思いますが、まだ家族としての形が残っています。それぞれが自立しているけれど、関係性は続いています。古い価値観では、『男性は子どもの面倒なんてみなから、離婚したら母親が単独で面倒をみる』というようなものがあったかもしれません」

「実際、50年くらい前は、離婚に対しては冷たい目が浴びせられる社会でしたし、カトリック教は『絶対に離婚してはいけない』と主張していました。でも、もう変わりました。デニスもそうですし、ほかの多くのオランダの男性もそうですが、男性も子どもの面倒を見ますから、女性だけが不自由を感じながら暮らさなければならないということはありません。だからこそ、別れたあとも、幸せに暮らし続けられているのではないかと思っています」

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