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妊娠・出産に悪影響を及ぼす食事とは!?〜超加工食品(UPF)が妊娠・胎児発育に及ぼす影響〜

齊藤英和 2026年05月25日

近年、生殖の健康に影響を与える修正可能な要因として「食事」への関心が高まっています。また同時に、世界的に食事パターンは大きく変化し、超加工食品(UPF:ultra-processed food)への依存が進んでいいます。UPFは高度に加工された工業製品であり、添加糖、飽和脂肪・トランス脂肪、塩、添加物が多く、食物繊維や必須栄養素が少ないといわれており、これらは一部の高所得国においては総エネルギー摂取量の50〜60%を占めるまでになっています。

UPFの摂取量が多いほど、複数の重大な健康障害リスクが上昇することが、最新の国際エビデンスで確認されています。 特に、心血管疾患・糖尿病・肥満・腎疾患・うつ病・全死亡リスクの上昇が強く示されています。こうした懸念を受け、 世界的に権威のある雑誌『The Lancet』は最近、UPFを世界的脅威として位置づける特集シリーズを発表し、健康に対して非感染性疾患が発症するリスクを強調するとともに、UPF摂取を抑制する国際的政策枠組みの必要性を提言しています。

これまでに分かった超加工食品(UPF)の妊婦と子どもへの影響

最近、妊婦のUPF摂取量が妊娠糖尿病、妊娠高血圧性疾患、乳児期の脂肪量増加などの不良な妊娠・小児アウトカムと関連することが示されました。また、ハイリスク妊娠の女性701名を対象としたコホート研究では、受胎前後の母親のUPF摂取量が高いほど、妊娠第1三半期の胎児の頭殿長(CRL)が小さいことが報告されています。さらに、健常男性、および不妊男性を対象とした研究では、UPF摂取量が多いほど精液所見が不良であることも報告されています。

 今回、世界的にUPF摂取が急増する中、男女双方の妊娠前後のUPF摂取が、生殖能力や妊娠初期の発生段階にどのように影響するかを明らかにする研究が報告されたため、紹介します(Hum Reprod. 2026 May 1;41(5):722-732. doi: 10.1093/humrep/deag023.)。この研究は、生殖能力の向上、健康な妊娠、さらには子の長期的健康を促進するエビデンスに基づくプレコンセプションケア戦略の構築に極めて重要です。

超加工食品に該当する食品

まず最初に、あまりなじみのない言葉である超加工食品について説明します。
NOVA分類では食品を4つに分けます

【UPFの特徴】
①家庭では再現できない加工工程(抽出・精製・加水分解・成形・押出し加工など)を使用している
②添加物(乳化剤、香料、着色料、甘味料、保存料、増粘剤、pH調整剤など)が多い食品
③原材料よりも“加工”が主体で、高糖質・高脂肪・高塩分になりやすい
④食物繊維・微量栄養素が少ない、という特徴を持つ食材
です。

わかりやすく具体例で説明すると、
UPFに該当する食品(グループ4)に属する食品としては、菓子パン、菓子類(クッキー、ドーナツ)、スナック菓子(ポテトチップスなど)、インスタント麺、冷凍食品(唐揚げ、ピザ、グラタンなど)、ファストフード、清涼飲料水(炭酸飲料、エナジードリンク)、加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコン)、シリアル(甘味の強いもの)、コンビニ弁当・総菜の一部、人工甘味料入り飲料などです。

また、UPFではない食品としては、白米、食パン(添加物少ないもの) → 加工食品(グループ3)、ヨーグルト(無糖) → 加工食品、チーズ → 加工食品、納豆、味噌 → 加工食品、冷凍野菜 → 最小限加工食品と分類されます。

UPF基準のポイントは、① “どのように加工されたか”で分類される、②添加物の多さではなく、加工工程の複雑さが本質です。

妊娠・出産に対する影響を調べた研究の概要

本研究は、オランダ・ロッテルダムで実施されている Generation R Next Study(受胎前から追跡する住民ベースの前向きコホート研究)の一部として行われました。 また、研究の目的は、妊娠前および妊娠初期における生殖能力・胚発育・小児期アウトカムに影響する要因を明らかにすることです。
参加症例は18歳以上で、ロッテルダム在住の妊娠を希望している、またはすでに妊娠している女性とそのパートナーです。カップルは 2017〜2021年 の間に、妊娠前または妊娠中に登録されました。 追跡は、小児期まで継続されています。

本研究では、妊娠初期にランダムに選ばれたグループに食事調査票(FFQ)が配布され、1054名の女性が食事データを登録しています。解析対象は以下の2つに分けられました:①妊孕性(fertility)解析用:831名の女性、②胚発育解析用:704名の女性(最終月経開始日が明確で、妊娠初期の超音波データがある症例)です。男性パートナーの食事データは①妊孕性解析:651名、②胚発育解析:537名でした。また、妊娠は女性側の生物学的プロセスであるため、女性のデータがある場合のみパートナーのデータを使用しました。

妊娠前後のUPF摂取の評価は、妊娠 12週(中央値)の時点で、半定量式食物摂取頻度調査(HELIUS FFQ)を用いて評価しています。また、不適切なエネルギー食品摂取例(例:女性 3500 kcal)は除外しました。

UPF分類は、NOVA分類に基づき、非UPFとUPF(グループ4)の2つに分類しました。UPF摂取量は、各食品のUPF比率 × 摂取量と計算し、1日の総摂取量に占めるUPF割合(gベース)として算出しています。さらに、標準偏差スコア(SDS)を用いて連続変数として解析し、四分位(quartile)に分けて臨床的な解釈もしやすくしています。

妊娠までの期間(Time to pregnancy)と受胎様式(mode of conception)は、受胎前および妊娠初期の質問票によって評価しています。最終月経(LMP)の初日は産科医療者から取得し、超音波検査時に月経周期の規則性や平均周期日数の詳細とともに確認しています。妊娠までの期間は、積極的に妊娠を目指し始めた開始日から LMP の初日までを用いて算出しています。

体外受精等の生殖補助医療(ART) によって妊娠に至った女性については、これらの治療が一般的に 1 年間妊娠しなかった後に開始されることから、妊娠までの期間に 12 か月を加算しています。受胎能(Fecundability)は、1 か月以内に妊娠する確率として定義しています。 また、妊娠までの期間は、①12 か月未満(fertile:妊孕性あり)、②12 か月以上(Subfertility:妊孕性低下) の 2 群に分類しました。ART を受けた女性は Subfertility 群に含めています。

男女共に分かった妊娠・出産への影響

研究結果としては、総摂取量に占めるUPF摂取割合は女性で22.0%(中央値は 563 g/日)、男性で25.1%(643 g/日)でした。651組のカップルのUPF摂取量の相関係数は 0.34 であり、両方とも低UPF摂取は200組(30.7%)、摂取パターンが不一致は371組(57.0%)、両方とも高UPF摂取であったカップルは80組(12.3%) でした。

女性(母親)では、UPF摂取量は妊孕能とは関連しませんでしたが、調整モデルでは、UPF摂取が多いほど、妊娠7週のCRLが小さく(差:−0.13 SDS(95% CI: −0.25, −0.01)、また卵黄嚢体積も小さい値でした

(差:−0.14 SDS(95% CI: −0.26, −0.02)。これらの関連は妊娠9週・11週では弱まりました。

一方、男性(父親)では、UPF摂取量が多いほど妊孕能が低下(FR: 0.90, 95% CI: 0.83–0.99)し、不妊性低下のリスクが上昇(OR: 1.36, 95% CI: 1.11–1.67)しました。また、父親では UPF 摂取は初期胚発育とは関連しませんでした。

妊娠・出産に向けて男女共に取り組むべきこと

世界的にUPF(超加工食品)の摂取が高く、さらに増加し続けている現状を踏まえると、この研究結果は、病因論的観点と公衆衛生的観点の両面から重要になります。

    親のUPF摂取は、妊孕性だけでなく、妊娠初期の胚発育とも関連していました。

このことから、 食事の質の低下がもたらす潜在的な影響についての認識を高める必要性、 そしてプレコンセプションケアや栄養指導において、両パートナーを対象とする重要性を示しています。

さらに、妊娠第1三半期における胚成長の障害は、早産、低出生体重、さらには小児期の心血管リスクの上昇など、不良な出生結果をもたらすことが指摘されています。また、卵黄嚢は、胎盤機能が確立する前の胚への栄養供給に重要な役割を果たし、その発達不全は、流産や早産のリスク増加と関連しているため、これらのリスクを軽減するためには、男女双方において妊娠の成立や初期発生に悪影響を与える因子をなるべく少なくすることが重要となっています。

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