昨秋、私たちは、オランダが「世界一子どもが幸せ」と呼ばれる理由を探りに、オランダへ訪問しました。その際、当時VVVフェンロというプロサッカーチームでコーチを務める藤田俊哉さん(現在はイングランドのプロサッカーチーム・リーズ)にもお話をお聞きしました。

前回ご紹介した【サッカー編】では、サッカーを通して見えてきたオランダの人たちの価値観について、主にお話をしていただきました。今回は、藤田さん自身のお話も含めた家族のつながり、そしてオランダにおける地域のつながりについてです。

家族との時間を取り戻す

──これまで藤田さんは、どのような暮らしをされてきたのでしょうか? ご家族との関わりを中心に教えていただけませんか?

日本では自宅が東京にあります。だから、現役選手のときは6年間単身赴任をしていました。ただ、最後は家から通えるチーム(ジェフユナイテッド市原・千葉)にしました。引退後の3年間はサッカー指導者のライセンスを取ったりしましたが、その間はサッカー選手のときに持てなかった、家族の時間を取り戻そうと思って過ごしました。

──家族の時間を取り戻そうとしたきっかけはあったんですか?

娘が知らない間に小学校を卒業していたんですよ。「あれ? 入学させたばかりなのに、いつのまにか卒業式?」と、あのときは慌てました。だから(2人目の)息子が入学するときは、ちゃんと帰ろうと思って。

やっぱり月日の流れは早いですね。名古屋で3年半、熊本で2年、磐田で1年、計6年の単身赴任でしたが、それでもけっこう帰ってきていたつもりでした。基本的には週に1回は帰っていたので。熊本のときでも2週間に1回は帰っていました。だからそんなに単身赴任という意識はなかったけど、家は常に2つあって、今思えば月日の流れが早かったな、と。

忙しいときに手伝ってくれたのは両家の親だった

──上のお子さんと下のお子さんは年が離れていらっしゃいますよね? どんな背景があったのでしょうか?

今(※取材当時)、上の子が18歳、下の子が12歳です。なぜ6年空いたのかといえば、子育てにサッカーにとやっている余裕がなかったからでしょうね。余裕がなかったので、子どもを計画的につくる、ということもなかった。それから、3人目についてもちょっと時間が足りなかったですね。

子育てについては、親によく手伝ってもらっていました。(夫婦)どっちかの母親だけではなくて、僕の親も妻の親も手伝ってくれて。

どちらの親も仲良かったのが幸せでしたね。だからよく親も連れて、みんなで旅行をしました。僕はみんなでワイワイガヤガヤやるのが好きだったので。

オランダは地元や家族が好き

──オランダと日本の親では、子どもとの関わりで違うところはありますか?

オランダの親は、「うちの子はこれだけの能力がある」という話をよくするような気がします。それから、オランダの子はちょっとしたことですぐに泣く。泣いたら親は甘やかす。日本だともう少し厳しくすると思います。

─オランダと日本とでは、地域社会とのつながりで違いを感じることがありますか?

オランダは地域のつながりがすごくある。みんな本当に自分の生まれ育ったところが好き。だから、たとえばサッカー選手であれば家から通いたがるので、家の近くのチームを選択することが多い。前泊もしたくないし、ホテルに泊まるのも嫌みたいです。監督も含めて(笑)。

もっといえば、多くの人が自分の実家の近くに住みます。

──日本人はそこまで生まれ故郷に愛着がない?

オランダに比べると薄いと思います。サッカーチームを見るとわかりますが、日本だとサポーター獲得のために地元密着をうたわないといけない。でも、オランダでは地元密着があたりまえだから、特にそういうことをチームが言う必要はないですからね。

みんなもっと若いうちに海外に出れば、日本や地元を好きになると思います。海外に出たら、必然と自分の生まれ故郷のことを考えるから。

海外に来て日本を好きになるというか……だって、日本以外は不便だらけですから。たとえば土日はお店も休みになっちゃいますしね。

「子どもは多いほうが幸せ」だと感じる理由とは?

──私たちは理想の数だけ子どもを産める社会に実現のために活動しています。藤田さん自身、家族や子どもというものをどういうふうに捉えていますか?

子どもは多いほうが、ゆくゆくは絶対に幸せだと僕は思います。妻が三姉妹で、いまいろんな状況で三姉妹が仲良くしているのを見ていると、とても楽しそうなんです。一方で僕は、4つ違いの姉がいるんですけど、異性ということもあって、ほぼ一人っ子みたいなもの。だから同性の3人が揃っているのを見ると、すごく羨ましい。もちろん良いことばかりではないのでしょうけども。

価値観によって変わると思うけど、やっぱり子どもは1人より2人、2人なら3人のほうがもっとよくて、4人ならもっと幸せ、というのが基本だと思います。

それは、もちろん年齢が小さいときに楽しいということもあるけど、大きくなったときや老後がきたときを考えると、余計にそう思いますね。だって、3人いたら6人になる可能性が高くて、その6人に子どもがいたらもっと家族は大きくなりますよね。

年を取ってくると必然と付き合う人が限られてくるし、減ってきますよね。そう考えると、自分のまわりに何歳になっても人が集まることが幸せだと僕は思うので、子どもは多いほうがいいんじゃないかなって思います。

2回にわたってご紹介させていただいた藤田さんのインタビュー。後半は主に藤田さん自身のことが中心になりましたが、現役時代には複数回の移籍を経験したばかりでなく、オランダでプレーしたこともある(※2003年にユトレヒト在籍)藤田さんならではといえるお話だったのではないでしょうか。とても貴重はお話ありがとうございました! イングランドでもご活躍できることをお祈りしています!