このたび、1moreBaby応援団では、ユニセフによって「世界一子どもが幸せ」と称されているオランダが約30年間かけて行ってきた「働き方改革」について、現地調査の結果をまとめた本『18時に帰る~「世界一子どもが幸せな国」オランダの家族から学ぶ幸せになる働き方~』を出版いたしました。

その出版記念として、本書でご紹介しきれなかったものの多くの方々に知っていただきたい事柄についてレポートしていきたいと思います。この連載では本書よりも『より身近なテーマ』を、『より親しみやすい文章』で紹介していきたいと思います。

第1回のテーマは「飲み会」。
みなさんは、飲み会がお好きですか? 好きだという人も、そうでもないという人もいるでしょう。好き嫌いは関係なく、「仕事をするうえで飲み会は避けられない」という人も少なくないかもしれませんね。

そんな飲み会について、とても興味深いデータがありますので、まずはそれをご紹介したいと思います。

パパの飲み会の頻度が少なくなれば「2人目の壁」は乗り越えられる!?

「夫婦の出産意識調査 」という、私たちが毎年全国の約3000人のパパママに対し行っている調査があります。その中で明らかになったことを一つご紹介します。

それは、「男性は子どもができても飲み会の回数がほとんど変わらない一方で、女性は子どもができると飲み会の回数が大きく減る」ということです。

さらに、飲み会からの帰宅時間についても、「男性は子どもがいるからといって早く帰るということはありませんが、女性は子どもがいると帰宅時間が早くなる」という傾向があることがわかったのです。

以上のことから、みなさんのイメージ通りかもしれませんが、男性と女性では「飲み会」に対するスタンスが異なると言えそうです。つまり、男性は『飲み会>家庭』であり、女性は『家庭>飲み会』という傾向があるのです。

ただしこの調査で、もうひとつ興味深いことがわかっています。上のグラフをよく見てみると、実は男性は子どもが2人以上になると、月8日以上、つまり週2回ペースで飲み会に参加する人が大きく減少しています。したがって、子どもが2人以上いるパパについては、「飲み会を減らす努力をしている」、もしくは、「飲み会を減らす努力をしたから2人目ができた」と言えそうです。どちらがより的を射ているか定かではありませんが、「男性の家事育児時間が長いほど第2子以上の出生割合が高い」という別のデータもあるので、おそらく後者のほうが要因だという方が多いのではないかと推測できます。

この結果からみても、まだまだ男性の家事・育児参加への意識は、十分ではないと言って差し支えないと思います。

「飲み会も仕事のうち」は改善していくべき?

今、社会全体で進められているのが「働き方改革」です。業務の効率性を改善したり、生産性を上げたりすることで、残業時間を減らしたり、テレワークなど、さまざまな働く環境の改善によって、子育て中や介護中の人でも不自由なく働くことができたりする社会を目指しています。

そうした働き方改革が実現することによって、男性の家事・育児への参加時間は長くなると予想されています。でも、早く仕事が終わっても飲みに行ってばかりでは元も子もありませんよね。

しかし、実際には見てきたように、妻(ママ)に比べて、夫(パパ)のほうが飲み会の回数が多く、帰宅時間も遅いということを考えてみると、まだまだ女性が多くの負担を抱えているといえます。これでは、なかなか女性の活躍は難しいのではないでしょうか。

日本では“飲みニケーション”という言葉に象徴されるように、仕事と飲み会はかなり密接な関係にあります。ですから、今回調査した「飲み会」のうち、少なくない数が仕事関係の飲み会であると言えそうです。

そう考えると、飲み会に参加している男性や、帰宅時間が遅いパパなどの中には、本当は帰宅して家族と過ごしたいのに、付き合いで飲み会に参加している人も多いのかもしれません。このことは、働き方改革を進めるうえで、きちんとみんなで考えなくてはいけない問題ではないでしょうか。

つまり、日本に「飲み会も仕事のうち」という習慣のようなものがあるとするならば、それは改善していく必要があるということです。

オランダには飲み会がない!?

実は、オランダの企業ではほとんど飲み会はありません。付き合いで飲むという文化もありませんでした。もちろん飲みたい人は飲みますが、「飲み会に消極的なのに参加する」ということは、まずありえません。

子どもが2人いるというアムステルダムの共働き夫婦は、こんな話をしていました。

「仕事が終わったら、真っ先に帰ります。私はコンサルタント、妻は弁護士ですが、基本的には2人とも18時過ぎには家にいます。お酒を飲むのは家です。外に飲みに行くときは、2人の子どもを両親や友人などに預けて、夫婦でレストランやバーに行きます。月に1〜2回ですね。それは、私たち夫婦にとってとても大切な時間です」

オランダ取材中、この夫婦のような話は、何度も出てきました。つまり、日本とオランダでは、「飲む」ということに対する意識が大きく異なるといえます。

もちろん、日本の社会においては、“付き合い”や飲みニケーションが大切だということも無視してはならないことだと思います。そうした文化は少しずつ改善していくべきであるとは思いますが、だからといって、すぐに変わるものではありません。付き合いをやめたことによって、会社での人間関係が悪化したとなれば、本末転倒です。

そこで、ご提案したいのが次のことです。

家族ぐるみの飲みニケーションで、
多様な働き方を認め合える土壌をつくってみませんか?

オランダには、多様な働き方が受け入れられる風土があります。

その一つの要因として、「部署内やチーム内、上司や同僚、部下などと、家族やプライベートのことを本当によく話すからです」と語るオランダの人が複数いました。

それは単に「小さい子どもがいる」というだけでなく、例えば近くに両親などサポートしてくれる人はいるのか、いないのか。いるのであれば何曜日であればサポートしてくれるのか。子どもの保育園や幼稚園で病気が流行ったりしていないのかなどなど、詳細な部分にまで触れるそうです。

このような話は、会社だけで交わされるのではありません。オランダでは、お互いの家族が参加して行うホームパーティーやバーベキューなどの飲みニケーションの場を通じても行われます。さらには、会社には関係のない“ご近所さん”も巻き込んで行われ、それによってサポートの輪がどんどん大きくなっていく、というお話もありました。

つまり、生活環境も含めた、お互いの「家族の顔」や「家庭の事情」がよくわかっているので、保育園の送迎のことでも、介護の問題でも、融通し合える、助け合うことができる土壌ができるということです。

一方で、日本では「仕事は仕事、プライベートはプライベート」と分けて考えがちです。また最近は、「会社内ではプライベートな質問をしづらい」という雰囲気があるというところが多いのではないでしょうか? でも、これではオランダのようにお互いのことを助け合う土壌はなかなかできません。

そこで提案したいのが、「飲みニケーションを家族ぐるみで楽しむ」ということです。日本の企業文化に根づいている飲み会を、子どもも含め、お互いの家族を巻き込んだ形のものに変えれば、オランダのようにお互いの事情が手に取るようにわかり、その結果、お互いで助け合う土壌ができるのではないでしょうか。もちろん、男性と女性とで、飲み会の回数が異なったり、帰宅時間で揉めたりといったこともなくなります。

2〜3ヵ月に1回でも十分ですので、会社が休みの週末に、飲みニケーションをしてみませんか? バーベキューやキャンプなどであれば、子どもも楽しめるでしょう。釣りが得意な上司が、子どもたちから絶大な人気を集める、なんていう微笑ましい光景も生まれるかもしれません。料理が得意という方であれば、自宅でパーティー形式にするのも楽しいでしょう。普段は妻(ママ)が料理をする家庭であれば、その日は夫(パパ)やその上司がタッグを組んで、女性陣や子どもたちに手の込んだ料理を振る舞えば、喜ばれるばかりではなく、上司との絆も深まります。

そのようにして、家族ぐるみで楽しむことができれば、飲みニケーションもできるし、多様な働き方を認め合う土壌もできます。まさに一石二鳥の方法ではないでしょうか?

「18時に帰る」社会をつくるために、飲みニケーションのやり方について、もう一度考えてみませんか?