ワンモア・ベイビー・ラボ
【私が経験した二人目の壁】不安と向き合い、夫婦で話し合いながら見つけたわが家の“乗り越え方”
秋山 開
2026年03月06日
「2人目はどうするの?」
そんな何気ないひと言に、少しだけ心がざわつく。
本当はもうひとり、と思う気持ちはある。でも、あの大変さをもう一度乗り越えられるのか──。
本当は2人以上の子どもが欲しいにもかかわらず、その実現をためらってしまう「二人目の壁」。そう感じているのは、決して少数ではありません。1more Baby応援団が全国の子育て世代約3000人を対象に行った調査では、7割以上の方がこの「二人目の壁」を感じていると回答しています。
今回は、かつてその壁を感じていたご夫婦に、あらためてお話をうかがいました。
薬剤師として働くリサさん(34歳・仮名)と、システムエンジニアのナオキさん(33歳・仮名)。
1年半前の取材時、リサさんは「2人目をつくりたい気持ちはあるけれど、躊躇している」と話していました。
当時の記事はこちら:【私が経験した二人目の壁】子どもの親である前に1人の人間として・・・本当は欲しい2人目に悩む理由
それから数カ月後、第二子を妊娠・出産。
おふたりはどのように「二人目の壁」と向き合ったのでしょうか。
「2人目は無理かもしれない」。そう思った理由
もともと2人以上の子どもを希望していたおふたり。特にナオキさんは、自身が年齢の近い3人きょうだいとして育ったこともあり、「理想は3人」と考えていたそうです。
一方のリサさんも、医学的な観点やキャリア形成を考え、「35歳までに出産を終えたい」という希望を持っていました。将来から逆算して人生設計を考え、結婚を前提とした出会いを求めてナオキさんと出会い、30歳で結婚。第一子を出産後、半年で職場復帰しました。
ここまでを見ると、順調に思えるかもしれません。
けれど、第一子の新生児期に産後うつの初期症状を経験したこと。そしてナオキさんが取得予定だった育休が仕事の都合で実現しなかったことが影響し、「2人目は無理ではないか」と考えるに至っていました。
リサさんにとっての「壁」は、単なる忙しさではありませんでした。
それは、ワンオペ育児の孤独と、心の余裕を失ってしまった自分への不安でした。
「夫が育休を取れなかったことで、非常に不安定なワンオペ育児を経験しました。その不安が払拭できなければ、2人目の計画は立てられないと考えていました」
“またあの状況になるかもしれない”──。
その思いが、リサさんの足を止めていたのです。
止めていた気持ちと、あらためて向き合う
気持ちに変化が生まれたのは、婦人科の定期検診がきっかけでした。
「先生と次の妊娠の話をしたんです。それから具体的に考えるようになって、心のなかにしまっていた“35歳までに産みたい”という気持ちと向き合いました」
帰宅後、リサさんはナオキさんと改めて話し合いの場を持ちました。「2人目の可能性についてあらためて考えてみた」と切り出すと、ナオキさんも同意しました。そして……。
「育休を取ってくれないと厳しい、ということも伝えました。そのうえで、ふたりで協力して子育てをしたいと話しました」
ナオキさんは前向きに受け止め、育休取得のために自ら動き出します。
プロジェクト単位で働く仕事の特性を踏まえ、早い段階から会社に意向を伝え、調整を進めました。
“会社が決める”のを待つのではなく、“自分から伝える”。
第一子の経験があったからこその行動でした。
「協力してほしい」だけで終わらせないために
「ただ、私の要望を一方的に伝えるのは良くないと思っていましたので、夫が協力しやすい環境をつくるために私がしようと考えていることや、彼からの要望も聞いたり、話し合ったりしようと心がけました」
そのひとつは、育児に対する考え方。第一子のときはワンオペ育児をするなかで、仕事から帰宅した夫がする育児へのサポートに対して、攻撃的になってしまうこともあったからです。
「第一子のときは、メンタル的にきついと攻撃的になってしまうことがあって。だから今回は、まず体調管理を整えて、なるべく気持ちをフラットにできるようにしようと話しました。それでも余計なことを言いたくなる瞬間はあるので、そういうときにはすぐに口に出さないで、ひと呼吸置いてみたり、自分から物理的にその場を離れてみたらいいのかもしれないね、といった感じです」
妊娠・出産後も、調整は続きました。
「たとえば『ありがとう』という言葉。かならず言うようにしています。それから完璧じゃなくても褒める、感謝する。それを基本にしています。第一子のときに、お互いにですけど、ストレートに言い過ぎてぶつかる経験をたくさんしましたから(笑)」
平等よりも、その日の体調を優先する
第二子が生まれ、夜中のミルクが再開した際には、少しずつイライラが溜まっていきました。このときにも2人で話し合いをした結果、生活スタイルを変更しました。
「当初は、『親+第一子』と『親+第二子』というふうに、2箇所に分かれて寝ていて、それを一日置きに交代していました。でも、これはあまりいい運用ではありませんでした。体調は日によって変わるからです。平等ではなく、元気なほうがミルクを担当するという方法に変えました」
一見シンプルですが、実行するにはお互いの信頼が必要です。“きっちり半分ずつ”ではなく、その日のコンディションに合わせて柔軟に。自分たちなりのやり方を、試行錯誤しながら見つけていったのです。
現在、ナオキさんは育休を終え、職場復帰をしていますが、リサさんは約3ヶ月後の第二子の保育園入園まで育児休暇を取る予定です。そのなかで少し誤算があったようです。
「朝がとにかく大変です。保育園の制度として、育休中は預かり時間が短縮されるため、預けられるのが9時なんです。もともとは8時台に出社している夫が保育園に送っていたのができなくなりました……。しかも第一子は絶賛イヤイヤ期中。たとえば下の子を抱っこしながら、『靴を履きたくない!』と寝転がって駄々をこねる上の子を何とか説き伏せて、保育園に連れていかないといけない。もう毎日、戦っています(笑)」
大変。でも、それだけではない
現在は0歳と2歳の子育て真っ最中。
「やっぱり大変は大変です。赤ちゃんと、少しずつ意思を持ち始めているけど、自分のことは自分でやりたいけどうまくいかない2歳児を同時に育てるのは。いかに夫婦で協力できる体制や環境を整えるかということと、手を抜けるところは抜くこと。この2つで乗り越えていくしかないのだろうなと、少し達観しています」
一方で、2人育てているからこそ感じる喜びも、もちろんあります。
「年齢が近いからこそ、お互いに関わり合いながら成長していく姿が見られるのはいいなと思います。新生児の育児も身体が覚えていて、先回りできる部分もありますし」
さらに、少し現実的なメリットも。
「おもちゃやベビー用品を、わりと綺麗なまま使い回せるので、意外と2人目はお金がかかっていないんです。それは嬉しい誤算ですね」
「二人目の壁」は、ある日突然なくなるものではないのかもしれません。
不安はゼロにはならないし、大変さも、きっと続いていくのでしょう。
それでも、話し合い、調整し、少しずつ歩み寄る。
その積み重ねが、リサさんご夫婦にとっての“壁との向き合い方”だったのだと感じます。
きっと「二人目の壁」のかたちはご家庭ごとに違うはずです。
それでも、話し合い続けることはひとつの鍵になるのかもしれない、そんなふうに思わせてくれるお話でした。
ご協力いただきありがとうございました!










