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【パパ育休の実態と本音】会社初のパパ育休取得に挑戦、工夫を重ねて見えた「取ってよかった理由」=後編=

秋山 開 2026年01月08日

男女の「仕事と育児の両立」を支援していくことを目的に、父親が育児休業を取得するための制度が整ってきています。

日本の男性における育児・家事の参加は、先進38カ国が加盟するOECD(経済協力開発機構)のなかで最低水準にあるとされますが、いわゆる〝パパ育休〟の取得率は上がり続け、厚生労働省の調査によると令和6年度は過去最高の40.5%に達しました。

しかし、同調査の回答率はおよそ5割。育休取得に消極的な企業ほど未回答であると思われることから、実際のパパ育休の取得率は先の数字よりも低くなると想像できます。地域や自治体ごとの温度差もあるでしょう。一般に、地方よりも都市部のほうがパパ育休は進んでいると指摘されます。

そう考えると、パパ育休に対して不安を抱いていたり、ネガティブな気持ちを持っていたりする子育て世代の方は、まだまだたくさんいることが想像できます。

そこで本連載では、実際にパパ育休を取得した家族へのインタビューを実施し、その実態や本音について迫っていきたいと思います。育休を取るか悩んでいるというかたや、「うちの会社で取れるはずがない」と考えているかた、子育て世代の部下をもつ上司や管理職のみなさんなどへのヒントとなれば幸いです。

【プロフィール】
夫:木村 拓海(32歳/仮名)小売・外食事業会社 勤務
妻:木村 典子(27歳/仮名)NPO法人 勤務
子:1人(2025年3月生まれ)
お住まい:宮崎県
【結婚・出産までの過程】
大学生時代に文化イベントの運営をつうじて出会い、交際に発展。その後、約5年の遠距離交際を経て結婚。その約1年後、第一子を妊娠・出産。
【育休期間】
夫:2025年3月~2026年3月(予定)
妻:2025年3月~2026年3月(予定)

(取材日:2025年8月某日)

家計の管理と制度の把握が、育休取得の不安を払拭する

育休の取得にあたっては、仕事の引き継ぎ以外にも2つのことを実行したのだと、拓海さんは語ります。それは、家計の管理と育休制度の把握です。

「家計の管理は非常に重要です。というのも、上司を含めた会社側は、金銭面での心配をしてくるからです。『育休なんて取って、生活費は大丈夫なのか』と。そのため、月々の収支をしっかりと把握し、夫婦で育休期間中の生活についても話し合い、給付金でまかなえるのかといったところまで詰めておくと、会社や上司、同僚に対しても自信をもって『大丈夫、問題ない』といえるようになります」

当然ながら育休制度を正しく把握することも不可欠。拓海さんはこう続けます。

「会社独自の制度はなかったので、基本的な産後パパ育休の情報は厚生労働省のサイトで情報を得ました。育児休業給付金の概算額と、振込予定月もこのサイトで調べられたので、助かりました。ただ、いくつかの不明瞭な点があって、それらはハローワークの専門部署に行って、直接話を聞きました」

それは、調べてくれた上司から教えてもらった、2025年4月から始まる新制度に関してなのだとか。

「『出生後休業支援給付金制度』というものが、私たちの出産予定日の1ヶ月後から始まると上司から聞きました。この制度を使えば、育児休業給付金とあわせて最大28日間、賃金額面で80%(実質、手取りで10割相当)がもらえるということでしたが、果たして3月に生まれる場合はどうなるのか、判然としなかったのです。だから直接、聞きに行くことにしたんです。わかりにくかったのですが、3月生まれであれば給付の対象になるということが判明しました」

自分で調べ、月々の収支バランスも把握できたことで、余計な不安はなくなった拓海さん。「ぜひ育休の取得を検討している人は、制度の把握と育休中の生活費の収支を計算してみてほしい」と話します。

苛立ちから協力体制へ。夫婦でつかんだ1日の育休生活のリズムと役割

実際に子どもが生まれ、育休を取得した後の生活はどうなのでしょうか。

「私も妻も、無事に育休が取れましたので、保育園に入れようと思っている2026年3月まで、基本的にふたりとも仕事をせずに家にいます。子どもが生後5ヶ月になる現在は、朝の7時ごろに起きてミルクをあげます。そのあと自分たちも朝食をとって、家事をこなします。12時ぐらいに次のミルクの時間が来るのでミルクをあげて、お昼ごはんを食べたら、今度は洗濯物をたたんだりとかを3時ぐらいまでに終わらせて、余裕がある日は仮眠を取ったりして、だいたい5時とか6時に子どもをお風呂に入れます」

そのあとの夜ご飯の準備と食事の時間は、お子さんが落ち着いているときが多いのだとか。

「夕食のあとから9時くらいまでは、子どもが落ち着いているので、テレビを見たりだとか、おしゃべりをしたりだとか、自分たちの時間となります。夜の9時から11時の間で寝かせに入って、我々も一緒に寝るというのが、だいたいいつもの1日の流れです」

一方の典子さんは夜中に起きたときの対応もしているのだとか。

「夜中に子どもが起きても、なぜかパパである私は気づかないんです。それでも最初のころは私も起こしてもらって、2人で面倒を見るようにしていたのですが、頑張ってしまうと次の日が使いものにならなくなってしまう。だから今は、夜中の対応は妻に任せて、そのかわりご飯の準備だとか他の部分でサポートできるようにしています」

ただ、最初の頃はイライラすることも少なくなく、一度は「ミルクをつくるためのお湯」が電気ポットに入っていなかったことがあり、典子さんが〝キレた〟こともあったのだとか。典子さんはこう話します。

「当時は母乳とミルクを混合であげていたんですけど、母乳をあげるのがうまくいかなくて、腱鞘炎になったりして。そんななかで毎日のように夜中の2時とか3時に起きて泣くので、疲れとイライラが溜まっていきました。それでも、一応、母乳をあげてからミルクをあげるというルーティンでやり過ごせるようになってきたところ、ミルクをつくるためのお湯がカラになっていて、『うわー!』っとなったんです」

「これが進んだら、きっといわゆる〝産後うつ〟と呼ばれる状態になるのだろうなとイメージできました。もともと妻は生理のときとかに精神面でバランスが崩れがちなので、もっとサポートしないといけないと感じました。それで、夜中は任せる分、昼間は私が積極的に動いて、それまで以上に妻が何もしないで休憩できる時間をつくるようにしようと思いました」

典子さんは、「日中はけっこう私が寝ていましたね。そこから1〜2ヶ月ほどで生活のリズムをつかめるようになったのも、2人で育休を取って、役割分担ができたから」と分析します。

育休で得た喜びと、仕事に活かせる新たな視点

もちろんそれ以外にも「育休を取って良かったと思うことはあります」と拓海さん。

「初めての寝返りの瞬間を見れたりといった経験は得がたいですよね。それから両親や友人が生まれた子どもを見に来てくれるときに、2人だからこそちゃんと余裕をもって対応できたこともよかったです。すでに私も妻も、子どもを1人で面倒をみるということが日常になっているので、9月になったら妻が友人と沖縄旅行へ行って、リフレッシュしてくる予定になっています」

そうしたプライベートの面だけでなく、仕事の面でもプラスに働くのではないかと拓海さんは想像を膨らませます。

「育休を取得したことで、仕事への考え方も間違いなく変わったと思います。というのも、私が店長を務めていたお店は家族連れ、子供連れが多いのですが、それらに対応するためのもの、たとえば子ども用の椅子だったり、赤ちゃんをあやすおもちゃだったりは、店舗ごとの判断で決めています」

実際に自分が赤ちゃんのお世話をしているなかで、どういうサポート器具が必要だったり、どういう接客を受けたらありがたいのかといったことがわかってくるようになったと拓海さん。

「別の飲食店に行ったときにも、『この部分は良いな』とか、逆に『ここはこうしたほうが良いのに』と思うこともあって、そうした経験は、きっと職場復帰後に役立つと思いますし、会社のためにいろいろと提案していきたいです」

少し先の話になりますが、その職場復帰に関して、決まっていることはあるのでしょうか。実は、すでに拓海さんも典子さんも会社の上司と相談し始めていると言います。

「私の会社は飲食店だけでなく、ほかにもいろいろな事業をしているので、もともと所属していた店舗に戻ることは考えなくていいと言ってくれています。さらに、妻も職場復帰し子どもを保育園に入れる予定になっていることも伝えてあるので、そのことを考慮した働きやすい部署に戻れるようにすると言ってくださっています。私自身も、自分より下の世代の子たちが働きやすくなればいいと考えているので、会社の仕組みづくりの部分でも会社に貢献していきたいです」

「子どもと家族の命を最優先に」――育休取得したパパからのメッセージとは

一方の典子さんは、「自分の働き方を見つめ直す良い機会になっている」と自己分析しつつ、次にように話します。

「私も上司がいろいろ提案してくださっていて、フレックス制も導入できるかもしれないし、給料が減るかもしれないけれど、時短勤務という選択肢もあるということを言ってもらっています」

典子さん自身は、「子ども優先でいきたいと思うので、そういった制度を利用しながらも、働けるといい」としつつ、やはり複雑な思いを持っていることも確かなようです。

「出産して思ったのが、どうしても女性は働くことを中断せざるを得ないし、これが2人目、3人目となる可能性もあるし、妊娠中だってつわりなどで仕事が制限されることもあります。『職場に迷惑をかけてしまっている』という思いもどうしても出てきてしまって、ちょうど自分を見つめ直しているところではあります」

最後に、拓海さんに「これから育休を検討している方々」へのメッセージを聞きました。

「おそらく会社の体制的に育休は取れないだろうなとか、周りの見る目が気になるとか、そういう男性が少なくないのではないかと思います。時代錯誤な発言かもしれませんが、『男性の役割は家事や育児じゃなくて仕事』と思っていたり、『会社での役割的にできるはずがない』という方もいるでしょう。でも、私はそんなことは関係なく、〝取ろうと思えば取れる〟と思っています。いちばん大切なのは子どもや奥さんの命ですから、そのことを考えれば、周りの目も仕事上のハードルも、なんら気にすることなく取ってほしいです。これは、ほかのパパやこれからパパになるみなさんに一番伝えたいことです」

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