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ワンモア・ベイビー・ラボ

管理職でありながら「週3日勤務」を選択した女性、その理由とは?/オランダ・インタビュー vol.9

秋山 開 2025年12月02日

「世界一子どもが幸せな国」といわれるオランダ。これはユニセフのリポートによるものです。さらにオックスフォード大学ウェルビーイング研究所が主導するWorld Happiness Report(世界幸福度報告)の2025年版でも、オランダは第5位に入っています。ちなみに、日本は同ランキングで55位です。

1more Baby応援団では、このように幸福度が高いオランダの社会や暮らしを探るべく、2016年より定期的な調査を行っています。その調査内容は、『18時に帰る』という書籍として1冊にまとめたほか、インタビュー記事等をこちらの『ワンモア・ベイビー・ラボ』でも掲載してきました。

Vol.7~10では現地在住者の協力のもと、オンラインを通じて2つの子育て家庭に伺ったお話をご紹介していきたいと思います。

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vol.9~10ではマライエさん(35歳)のインタビューを紹介します。人口約3万人の学園都市に住む彼女には、9歳と7歳になるお子さんがいます。また、約2年前には離婚を経験していますが、元パートナーのデニスさん(43歳)は、同じ街に住んでおり、今でも協力し合いながら子育てをしています。

マライエさんはオーガニック食品を扱うスーパーマーケットの店舗デザイナーとして週3日勤務をしています。一方のデニスさんは大学の本部スタッフとして週3.5日勤務をしています。

「管理職でも週4日勤務はあたりまえ。私の上司も週4日勤務です」と語るマライエさんですが、彼女の働き方はひじょうにフレキシビリティにあふれています。事務所に行くのは週1回。残りの週2回分の仕事は、2人の子どもの子育てや自分の自由時間とのバランスを考え、〝半日×4日〟にしているのだとか。

前編(vol.9)では、デニスさんとの出会いから出産、そしていまの働き方に至るまでのエピソードをうかがっていきます。

学生時代に出会い、26歳で第一子を妊娠・出産した

─本日はインタビューの時間を割いていただいて、ありがとうございます。最初にマライエさんとデニスさんが出会ったきっかけから教えてください。

「私たちは学生のときに出会いました。私はオーガニックスーパーマーケットでアルバイトをしていて、彼はそのお店のお客さんでした。ときどきおしゃべりをすることがありましたが、関係性が深まったのは、一緒にオーガニックの野菜に関するセミナーへ参加したときでした。それから2年ほど交際した後、同棲をすることにしました。その頃は本当にいろんなところを旅行しましたね」

─どういったタイミングで子どもをつくろうと考えたのでしょうか?

「同棲を始めた後、私は今も働いているオーガニックスーパーマーケットで正社員になることができました。デニスも同じ街で仕事を見つけていました。決して多くはないけれど、お互いに安定した収入があるし、一緒に暮らしている家もある。それなら、子どもをつくってもいいんじゃないかって、彼のほうから提案がありました。彼は4人きょうだいの末っ子で、上の3人がもう子どもをつくっていて、そうした環境にあった彼は子どもがすごく欲しかったみたいです。そのとき私はまだ26歳で、オランダでは子どもを産むには若い年齢でしたけれど、産むという決断をしました」

─2人目も2歳差で産んでいますよね。

「1人目が1歳半になったときに、2人目の話が出ました。2歳差というのは、子ども同士も遊びやすいし、学校の送り迎えなども便利です。オランダでは2歳違いの子どもを2人つくるというケースは多く、私たちもその選択をしました」

─デニスさんは4人きょうだいということですが、マライエさんは?

「私は兄がいます。ちなみに2歳差ですよ(笑)。ここから車で1時間半以上かかるので、なかなか会えないのが残念です。ただ、彼の家は両親の家から遠くないので、その意味では安心しています」

 

子どもを産んでからは「週4日勤務」を「週3日勤務」に短縮した

─事前アンケートで、もともと週4日勤務だったのを、子どもを産んでから週3日に減らしたとのことでした。まずは、週4日勤務だった理由を教えていただけますか?

「週5日働くことが普通だと思われているかもしれませんが、私たちの世代や私よりも若い世代では、週4日勤務は常識になっています。ワーク・ライフ・バランスを調整し、自分で働く時間を決め、それ以外の時間は自由な自分の時間に使うのが、あたりまえだからです」

「私の場合、子どもがいないときには、週4日勤務がちょうどよかった。週5日、つまり週40時間で働いたこともありましたが、それはすごくストレスでしたし、集中力ももたなかった。効率よく働くという意味でも、週4日が私に合っていたのです」

─そして、子どもができてからは1日を減らして、週3日に変えたということでした。これには理由がありますか?

「第一子が生まれたときに、私かデニスのどちらかが週3日勤務にしようと話し合いました。デニスも子育てに積極的に関わりたい気持ちがあったのですが、私には授乳にかんして少しこだわりがあり、保育園に預けたとしても授乳を続けたかった。そうなると、搾乳機を使う必要が出てきます。週4日働くということは、週4日搾乳機を使うことを意味します。私はそれを避けたかったので、デニスではなく私が勤務日を減らすことにしました」

─実際、小さなお子さんを育てしながら働くのはどうでしたか?

「小さな子どもたちを2人育てながら働き続けるというのは、簡単なことではありませんでしたが、両親が週に1回、日曜から月曜にかけて泊りがけでサポートに来てくれたこともあって、なんとか乗り切ることができました」

 

週3日勤務=週1出社+週3回・半日の在宅勤務

─マライエさんが働く会社では、週4日や週3日などの時短勤務は多いのでしょうか?

「私のポジション、つまり管理職の部類に入りますが、その場合でも週4日勤務はかなり多いです。週5日勤務よりも多いと思います。私の上司も週4日勤務です。一方で、週3日勤務はいません。私だけだと思います。会社からは、『週4日に戻ってほしい』と言われることもありますが、今のバランスが好きなんです」

「私が働く会社は、給料は決して高くありませんが、かなりオープンマインドで融通が利きます。いちど検討したことがあるのですが、同じ食品スーパーマーケットの最大手に転職したら、おそらく給料は2倍以上になると思います。でも、そのぶん今のような働き方はできなくなるでしょう。大手は数字(結果)が大切なので、プレッシャーは大きくなります」

─そうなんですね。少しイメージしづらいので、具体的に教えてください。

「週2日は在宅勤務で、週1日は事務所に行くという勤務体系となっていますが、週2日の在宅勤務は自分で管理していいことになっているので、実は半日×4日という働き方にしています。朝、子どもたちを学校に送っていったら、家に戻って仕事をします。13時になったら子どもたちを迎えに行き、その後は子どもたちが家にいることになります。だから半日の在宅勤務を4回に分けて行うことにしました。週2回が在宅勤務という換算となります」

─非常ににフレキシビリティがありますね。日本でもコロナ禍のなか、在宅勤務が広がりました。オランダでも変化があったのでしょうか。

「もともと在宅勤務という制度はありました。でも、それほど普及していなかったと思います。たとえば子どもが風邪を引いたとか、車が故障していて修理中だから会社まで通勤しづらいといったときに、在宅でも会社のサーバーにログインするというオプションがありました。でも、コロナ禍以降は、それが固定化し、ミーティングがオンラインに移行するなど、柔軟性は大きく広がりました」

2年前から別々の家で暮らすことになった

─プライベートな話になりますが、2年前に離婚され、別々の家で暮らしているということで合っていますか?

「はい。2021年の12月に私たちは離れました。一緒に住んでいた家には彼が残り、私は新しい家に移りました」

事前にお願いしていたアンケートによると、マライエさんとデニスさんは子育てをする週が交互にあって、1週間ごとに交代で面倒をみているということでした。オランダではこのように、別れた夫婦やパートナーが、協力して子育てを続けることは一般的なのだとか。

次回、後編ではco-ouderschap(コ・アウデルスハップ=共同養育)と呼ぶその制度や、お二人の日々の暮らしへの落とし込み方などをうかがっていきます。

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