みなさんは、健康効果があるオメガ3脂肪酸をご存知でしょうか?
オメガ3脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸で、体の健康に欠かせない脂肪酸と言われています。体では合成できないため、食事として摂取することが必要な必須脂肪酸です。このオメガ3脂肪酸は、主に植物油、魚、くるみなどのナッツ類に多く含まれており、 数個の二重結合を持つことから酸化されやすく、これを含む油脂は劣化しやすいという特徴があります。オメガ3脂肪酸の代表的なものとしてALA(α-リノレン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)があり、ALAは、植物油の大豆油やナタネ油に含まれるほか、特にエゴマ油やアマニ油に多く含まれます。また、EPAやDHAは、アジ、サバ、イワシ、サケ、マグロなどの魚に多く含まれます。
この記事の目次
◯ オメガ3脂肪酸の効果と摂取方法
◯ オメガ3脂肪酸の妊孕性への効果に関する研究について
◯ オメガ3脂肪酸サプリメントの摂取で高まる妊娠率
◯ なかなか妊娠できない場合は『オメガ3脂肪酸』の摂取も一案に
オメガ3脂肪酸の効果と摂取方法
オメガ3脂肪酸は様々な健康効果があることで知られており、これらを列挙します。
① 血管を拡張し血圧を下げる。
② 悪玉コレステロールであるLDLを減少させ善玉コレステロールであるHDLを増加させる。
③ 血液の粘度を下げ血栓の形成を防ぐ。
④ 体内の炎症疾患を抑える働きがある。
⑤ DHAは脳の構造と機能に重要な働きをしており記憶力や学習能力の向上に寄与する。
⑥ うつ病や不安症のリスクを軽減する可能性がある。
⑦ DHAは網膜の重要な構成成分であり視力を維持する。
⑧ 妊娠中にオメガ3脂肪酸を摂取は、胎児の脳と目の発育に寄与する。
これらのオメガ3脂肪酸の健康効果を得るためには、魚、ナッツ、植物油などのオメガ3脂肪酸を含む食品をバランスよく摂取することが大切です。多価不飽和脂肪酸にはオメガ3脂肪酸以外に、コーン油、サンフラワー油、大豆油などに含まれる、リノール酸やアラキドン酸と言ったオメガ6脂肪酸があります。オメガ6脂肪酸は、適度な量であれば免疫機能をサポートし、細胞の成長と修復を助ける役割を果たします。
しかし、量が増えると炎症を促進すると言われています。オメガ3脂肪酸が炎症を抑える効果があるのに対し、オメガ6脂肪酸は過剰に摂取すると炎症を促進する効果があるため、両者の摂取バランスが重要になります。現代の食生活では、オメガ6脂肪酸の摂取が多くなりがちです。理想の比率は、オメガ3:オメガ6が1:4ぐらいですが、実際には1:14ぐらいの比率になっています。バランスの取れた食事を心がけることで、これらの脂肪酸の健康効果を最大限に引き出すことができます。
オメガ3脂肪酸の妊孕性への効果に関する研究について
さて、このように健康維持に重要なオメガ3脂肪酸ですが、妊孕性に関してもいろいろ研究されてきました。最近、比較的多くの症例を用いたしっかりとした研究結果が報告されたのでご紹介します(Stanhiser J. et al. Human Reproduction 2022;37:1037-1046 )。この研究では、オメガ3脂肪酸サプリメントを服用することが、妊孕性にどのような影響を及ぼすかについて検討しています。具体的には、妊活を初めた後、不妊治療を行わずに自然に妊娠するか(妊孕力)についてです。
対象は、2008年から2015年にこの研究に登録された1,036人、4758月経周期より研究期間中のデータ記載に漏れがなく、不妊治療は開始せず、自然妊娠を試みた人、900症例、2510月経周期を解析しています。これらの症例は、研究登録時点で、年齢が30歳から44歳、妊娠を試みてから3か月未満、また既往歴で不妊の診断を受けたことがない症例です。研究期間中、毎日その日に服用したサプリメントや治療薬を薬品データベースで登録してもらいます。オメガ3脂肪酸サプリメント服用月経周期の定義は、『ある月経周期中20%以上の日数でオメガ3サプリメントを服用している周期』と定義しています。また、オメガ3脂肪酸サプリメントを服用している人は、服用していない人に比較すると、若く、体型もスリムで、妊娠歴がなく、白人が多く、ビタミンDやマルチビタミンを服用している人が多くいました。そのため、オメガ3脂肪酸サプリメントの効果を判定する際には、年齢、体重、人種、既往妊娠、ビタミンDやマルチビタミン摂取によってデータを調整しました。その上で、オメガ3脂肪酸サプリメントを服用している人と服用していない人の妊孕力(ここでは不妊治療を使用せず自然妊娠に至る能力)を検討しています。
オメガ3脂肪酸サプリメントの摂取で高まる妊娠率
オメガ3脂肪酸サプリメントを『摂取している女性』は、「摂取していない女性」に比べて、特定の月経周期に妊娠する確率が2.20倍(95% CI 1.68, 2.88)と高値でした。年齢、肥満、人種、ビタミンD摂取量を調整した後でも、オメガ3脂肪酸サプリメントを『摂取している女性』は、『摂取していない女性』に比べて、特定の月経周期に妊娠する確率が2.04倍(95% CI 1.53, 2.71)と高値でした。
さらに、過去の妊娠歴を含めてモデルを調整した場合でも、オメガ3脂肪酸サプリメントを『摂取している女性』は、『摂取していない女性』に比べて、特定の月経周期に妊娠する確率が2.12倍(95% CI 1.59, 2.82)と高値でした。オメガ3脂肪酸サプリメントを摂取している女性の98.23%が、同時にマルチビタミンを摂取している可能性が高いので、マルチビタミンの使用を交絡因子として追加したところ、効果推定値が30%変化しました(年齢、肥満、人種、ビタミンD、妊娠前およびマルチビタミンの使用を調整した場合のFR 1.45(95% CI 1.07, 1.93);年齢、肥満、人種、過去の妊娠、ビタミンD、妊娠前およびマルチビタミンの使用を調整した場合のFR 1.51(95% CI 1.12, 2.04))でした。
なかなか妊娠できない場合は『オメガ3脂肪酸』の摂取も一案に
この結果より、オメガ3脂肪酸サプリメント摂取は妊孕性を高めることが判明しました。しかし、この結果をより確実なものにするには、この研究を無作為化比較試験で行い、かつ、オメガ3脂肪酸の用量―反応相関を検討する必要があります。
それでも、オメガ3脂肪酸サプリメントを摂取することは健康にもよく、妊孕性も高めるため、妊活をしてもなかなか妊娠できていない方は、オメガ3脂肪酸サプリメントを摂取することも一案かもしれません。