本当は2人以上の子どもが欲しいにもかかわらずその実現を躊躇する「2人目の壁」。1more Baby応援団が2022年に「2人目の壁」を感じたことがある全国の既婚者約2200人に対し行った調査の結果では、壁を感じる理由として「健康上の理由」をあげた人が全体で26.8%、現在子どもがいない人のみでみると33.7%となり、多くの人が「健康上の理由」で悩んでいる状況が分かりました。

しかし、日本の20〜30代の女性の健康に対する意識は決して高いとは言えません。厚生労働省が発表した『「国民生活基礎調査」/2019(令和元)年』の結果では、健康診断や人間ドックの受診率は20代で65.9%、30代で60.5%と低迷しており、特に女性のがん検診の受診率は諸外国と比べて低いのが実態となっています。
子育て期である20〜30代の女性の受診は、『乳がん』や『子宮頸がん』の早期発見にもつながり、将来子ども産み育てるためにはとても大切なことです。

そこで今回、人間ドックとレディースドックの内容を詳しく知るため、『慶應義塾大学病院予防医療センター』に伺い、婦人科を担当している富里祥子先生にお話を伺いしました。

【 インタビュアー 】
富里先生、本日はよろしくお願いします。
日本では特に妊娠適齢期の女性の人間ドックや婦人科検診の受診率が低いのが現状です。
日々の生活が忙しかったり、受診内容に対して痛みや恥ずかしさなどで不安を抱えていたりする人も多いようですが、まず始めに人間ドックの受診が推奨されている理由について教えてください。

【 富里先生 】
近年、「人生100年時代」とよく言われますが、一人ひとりが自分らしい豊かな生活を送るためには健康寿命が大切です。体調が悪くなってから慌てて病院に行くのではなく、体の変化をあらかじめキャッチして、それをケアすることで健康な状態をキープすることが一番大切です。そのために受けるのが人間ドックであり、人間ドックを受けることで定期的に体の今の状態を知ることができます。

「人間ドック」 について

【 インタビュアー 】
人間ドックは20歳から受診可能だと思いますが、何歳からどの程度の頻度で受診すれば、病気の早期発見や健康の維持につながるものでしょうか。

【 富里先生 】
一人ひとり持っている背景が違うので何歳になったらっていうのは一概には言えませんが、人間ドックは心配なところを検査に加えるよう提案できるので、例えば、家族に『乳がん』や『子宮がん』など遺伝性の病気がある場合は、今は症状がなくても相談することが大切です。
また、「ちょっと生理に関して気になることがあるけど、病院かかるまででもないかな」みたいなこともあると思います。そのような時もまずは検診を受けていただくといいかなと思います。

【 インタビュアー 】
病院に行くまでもないと感じる症状でいうと、例えば目安として、生理痛はどうですか。

【 富里先生 】
生理痛もそうですね。生理痛や生理の量が少なかったり、多すぎたり、あと生理不順がある場合なども、検査を受けてみると良いと思います。検査の結果、必要であれば婦人科の受診をおすすめしています。

【 インタビュアー 】
生理は他の人と比べようがなく、自分の生理が正常かどうか、判断が難しいと思います。
先生のお考えになる正常な生理とはどんなものか教えていただけますか。

【 富里先生 】
一概には言えないのですが、日常生活を生理じゃない時期と同じように送れるかどうかというのは、やはり大事なポイントだと思いますね。

お薬を飲んでも辛くて無理している状態は、正常ではない可能性もあります。「みんな我慢している」って思う人も多いと思いますが、我慢せずにまずはご相談いただければと思いますね。

20代からの受診が推奨される「レディースドック」とは

【 インタビュアー 】
人間ドックに加えて、「レディースドック」を受診する必要性や推奨される年齢について教えてください。

【 富里先生 】
人間ドックの基本メニューは、生活習慣病がメインになり、年齢や性別に関係なく全ての人に共通する疾患についての検査です。
一方で婦人科系の疾患は、女性特有の病気もあり、「レディースドック」でチェックをすることがおすすめです。年齢が若い時は病気とか関係ないと思いがちですが、婦人科の疾患に関しては20〜30代でも罹る疾患が多くあります。性交渉の経験がある方は『子宮頸がん』の検査は必須です。

【 インタビュアー 】
レディースドックでは具体的にどのような検査を行いますか。

【 富里先生 】
当院のレディースドックでは、産婦人科の専門医による婦人科の診察に加えて、骨盤のMRIの検査、また乳腺の検査として、乳房の超音波とマンモグラフィ を行っています。また、女性に多い骨粗鬆症の検査として、骨密度・体組成の検査を実施しています。

(レディースドックのメニュー)
●専門医による婦人科診察 *婦人科検査
●子宮頸部細胞診 *婦人科検査
●経腟超音波 *婦人科検査
●コルポスコピー *婦人科検査
●マンモグラフィ(乳房X線)
●乳房超音波
●骨盤MRI(子宮・卵巣)
●骨密度測定

婦人科診察の種類について

【 インタビュアー 】
レディースドックの中で、富里先生が専門とされている婦人科診察についてお伺いします。まずは、婦人科診察の種類など、概要について教えてください。

【 富里先生 】
婦人科の診察では、婦人科の臓器である子宮と卵巣の疾患の有無を調べています。当院のドックの婦人科の診察では、子宮頸部の細胞診の検査、それとコルポスコピーの検査。あと経腟の超音波と内診をしています。
検診は継続して受診することが重要です。患者さんが次回以降も安心して受診していただけるように、お痛みや不快なところが少しでもないよう注意しながら診察をしています。

【 インタビュアー 】
例えば若い女性で、どうしても内診が嫌だという場合は、どのような対応をされていますか。

【 富里先生 】
そうですね、できるだけ力を抜いていただけるようお話もさせてもらい、できる範囲内で診察します。例えば本来、経腟超音波で見る子宮・卵巣に関しては、MRIを撮ることでその辺りを見ることが出来るので、どうしても抵抗がある方に対してはそういった代替案などもご案内もしています。

「専門医による婦人科診察」の内容と分かること

【 インタビュアー 】
婦人科の診察はどのような検査で、何が分かるのでしょうか?

【 富里先生 】
指を腟内に挿入して、子宮や卵巣などの状態を調べます。内診台という専用の診察台に乗って診察を受けます。子宮自体の大きさ、前屈・後屈、左右の向き、形、かたさを調べます。例えば子宮自体が大きくなっている場合は、子宮腺筋症や子宮筋腫の存在が疑われます。これらの疾患は、生理が多く失われる血が多量になり貧血になるなど、体に大きな負担がかかることがあります。また、不妊症の原因になることもあります。

あとは生理がある年代にも関わらず、子宮がすごく小さくなっている場合も稀にあります。この場合は、生理が順調に来ていないのではないかなど、疑って診ていくことになります。

子宮の向きに関しては、子宮の向きが変わったり、動きが悪くなったりしていることがあります。このような場合は、子宮内膜症を一番に疑います。子宮内膜症があると、子宮が周りの臓器と癒着をしてしまい、動きが通常と異なったり、悪くなったりしてしまう原因となります。

子宮内膜症では生理痛がひどかったり、慢性的な骨盤の痛みが見られたりすることがあります。子宮内膜症は不妊の原因になります。これらのことが婦人科検診では分かります。

【 インタビュアー 】
子宮が後屈の人は前屈の人に比べて少数だと聞きました。後屈だと治療が必要ですか。

【 富里先生 】
子宮の向きは、先ほども言ったように内膜症などで変わってくることもありますが、もともと子宮が後屈という方もいらっしゃいます。そのような方は特に治療する必要がありません。しかし、子宮内膜症の症状として、子宮と後ろ側(背中側)の臓器がくっついていたり、子宮が後ろ側に曲げられてしまったりといったことがあります。そういう場合は手術をしたり、薬で治療をしたりといったことが、可能性としてあります。

【 インタビュアー 】
不妊の原因となる、子宮の形や特徴がありますか。

【 富里先生 】
子宮の形態異常、形の異常というのは、女性の約5%にあると言われています。その形の異常、形態異常があることで、子宮内膜の血流が悪くなり、不妊の原因になるという可能性があります。ただ一方、不妊症の方で子宮の形態異常の頻度が増えているというわけではありません。なので、その辺りの関係性は難しいところかなとは思います。
ただ、子宮の形態異常の一つである「中隔子宮」に関しては、流産を繰り返してしまう不育症の原因となります。

【 インタビュアー 】
「中隔子宮」とはなんでしょうか?

【 富里先生 】
子宮の形態異常のひとつであり(子宮内腔に中隔と言われる壁が張り出してきて子宮腔が二つに分かれてしまう病態 )、不妊症の原因というよりも、流産を繰り返してしまう不育症の原因だと言われています。

「子宮頸部細胞診」の内容と分かること

【 インタビュアー 】
子宮頸部細胞診検査では、何を目的にどのような検査を行いますか。

【 富里先生 】
子宮頸部の細胞診検査は、子宮頸がんとその前病変である子宮頸部異形成のスクリーニング検査です。子宮の頸部を『検査用のブラシ』で擦って細胞を採り、検査をします。

【 インタビュアー 】
痛みはありますか?

【 富里先生 】
細胞を擦ること自体は「こすられてるな」みたいな感覚で、それほど痛みはないとは思います。ただ、細胞を擦る前に子宮頸部を目視するために腟内に『クスコ腟鏡』という器械を挿入しますが、その時に少し痛みを感じる方はいらっしゃいます。クスコ腟鏡のサイズを極力工夫することで、できるだけ痛みを抑えられるよう工夫をしています。

【 インタビュアー 】
子宮頸部細胞診検査は、何歳ぐらいから受診すべきでしょうか。

【 富里先生 】
子宮頸部の細胞診検査は20歳から受診することが奨められています。

【 インタビュアー 】
子宮頸がんはどのようながんで、体質や遺伝・生活習慣など、どのような人が罹りますか。

【 富里先生 】
子宮にできるがんには、子宮の外側(出口側)にできる『子宮頸がん』と、奥の方にできる『子宮体がん』の2種類があります。

子宮頸がんは毎年新たに1万人ぐらいの方が罹っていて、約3千人の方がお亡くなりになっています。がんと言うと高齢者に多いイメージがありますが、子宮頸がんは比較的若い世代の方に多く、30代の後半が発症年齢のピークになっています。

子宮頸がんの原因に関しては、HPV(ヒトパピローマ)ウイルスがその原因の90%以上を占めると言われています。HPVウイルスに感染するということが一番大きなリスク因子になります。

【 インタビュアー 】
HPVウイルスとはどのようなウイルスですか。

【 富里先生 】
HPVウイルスはヒトにしか感染しないウイルスです。ヒトの中でずっと住み続けています。HPVウイルスには色々なタイプがあって、これまで200タイプ以上の存在が確認されています。その内、子宮頸がんに関係するものは14タイプと言われています。
HPVワクチンに含まれているのは、子宮頸がんになる14タイプの内の上位7種類に加えて、尖圭コンジローマといって、子宮頸がんではないものの別の腫瘍性の病変ができることがあり、そちらに対するワクチン2種類が入っています。最大で現在、9価のワクチンが発売されています。

【 インタビュアー 】
HPVウイルスはどこに存在して、具体的にどのような行為で感染しますか。

【 富里先生 】
HPVウイルスは皮膚や粘膜などに存在し、激しい接触で感染します。湯船とか温泉、プールなどでウイルスに接しただけでは感染しません。性交渉など強い接触で皮膚や粘膜が傷つくと、そこから体内にウイルスが侵入して感染すると言われています。
先ほども申し上げた通り、性交渉の経験がある方はどなたでも感染している可能性があり、検査は必須です。

【 インタビュアー 】
HPVウイルスの潜伏期間と発症までの期間について教えてください。

【 富里先生 】
HPVウイルスに感染をしてから子宮頸がんに進行するには、数年から数十年かかると言われており、発症までの期間はその人の免疫力やウイルスのタイプにもよって変わると言われています。

【 インタビュアー 】
ワクチンのキャッチアップ接種は推奨しますか?

【 富里先生 】
HPVウイルスの感染を防ぐ一番効果的な方法はワクチン接種です。日本では一時期ワクチン接種の推奨が止まっていた時期があったので、ワクチンを打って抗体を獲得する機会を逃してしまっている方が大勢いらっしゃいます。

ワクチンを広く奨めてきた外国では、子宮頸がんは減って稀ながんになってきている国もあります。このままだと日本でだけ「子宮頸がんが減らない国」になってしまう恐れがあります。

キャッチアップ接種は、正規接種の時期を過ぎた方に対して行う追加の接種になります。最もワクチンの接種の効果が高いのが、性交渉が始まらない10代の前半。小6から高1というふうに正規接種の枠はなっています。しかし、20代になったとしても、キャッチアップ接種をすることで、それ以降のHPVウイルスへの感染は防ぐことができると言われています。ただ、対象年齢や接種の回数、期間、打てるワクチンの種類などが複雑なので、まずお近くの婦人科の先生にご相談されるのがいいと思います。

【 インタビュアー 】
ワクチンは婦人科に行けばどこでも打っていただけるのでしょうか?

【 富里先生 】
そうですね。ただ一度、病院を確認していただいた方がいいとは思います。ワクチンは基本的に筋肉注射でトータル2回、もしくは3回接種します。
病院にもよるとは思いますが、基本的にはワクチン接種を希望すればすぐ打ち始めることができます。

「コルポスコピー検査」の内容と分かること

【 インタビュアー 】
続いて、コルポスコピー検査について教えていただけますか?

【 富里先生 】
コルポスコピー検査は子宮頸部を拡大して観察をする検査になります。観察をすることで『子宮頸がん』や、特にその前病変の『子宮頸部異形成』を見つけることを目的に行っています。

観察する際に薬剤である『酢酸』という試薬を子宮頸部にかけて観察をすることで、その病変部がよりはっきり見えるようになります。今回の検診では行ってはいませんが、精密検査としてコルポスポピー検査を行う場合には、酢酸を使って子宮頸部を観察した後、組織を採る『生検』というものを行っています。

【 インタビュアー 】
酢酸ってお酢ですよね。しみないですか?

【 富里先生 】
多少しみるという方もいらっしゃいますが、多くの方は「そんなに気になりません」というふうにおっしゃるので、心配はいらないかなと思います。基本的には薄めてから使用しています。

【 インタビュアー 】
コルポスコピーの検査に痛みはありますか?

【 富里先生 】
精密検査として組織を採るときには、少し組織を摘んで取るので、その痛みが出るということがあります。ただ、基本的に検査時間は数分で終わるものですので、そんなに長い時間ではないとは思います。

【 インタビュアー 】
その採取した場所の傷はどうなりますか。

【 富里先生 】
組織を摘んで取るので、一時的にその部分に傷ができて出血しますが、すぐに止血をして傷は治っていきますので、心配はいらないと思います。

「経腟超音波検査」の内容と分かること

【 インタビュアー 】
続きまして、経腟超音波検査についてお伺いします。経腟超音波検査では何を目的にどのような検査を行いますか。

【 富里先生 】
経腟の超音波検査は骨盤内の主に子宮や卵巣の病気を見つけます。頻度が多いものとしては、『子宮筋腫』と『卵巣嚢腫』です。超音波の機械についている『経腟プローブ』という超音波の器具を腟内に挿入して骨盤内の観察をする検査です。

【 インタビュアー 】
超音波検査は痛みがありますか。

【 富里先生 】
基本的に痛みが出るというような検査ではないです。ただ、プローブを入れるときに、腟内に少し痛みが出るという方がいらっしゃいますが、挿入するときと出すときの一時的なものですので、痛みが検査中ずっと続くことはないと思います。

「骨盤MRI検査」の内容と分かること

【 インタビュアー 】
続きまして、骨盤MRIについてお伺いします。骨盤MRI検査では何を目的にどのような検査を行いますか。

【 富里先生 】
骨盤MRI検査は、骨盤の中の臓器の疾患を網羅的に見るといったイメージです。一般的な婦人科の診療の場合、精密検査として細かい疾患の状況や悪性所見の有無などを調べるときに使われています。
約20分間、トンネル状の寝台に仰向けに寝た状態で子宮・卵巣周辺を撮像します。検査中は大きな音がするので、耳栓を装着していただきます。
人間ドックの立ち位置としては、経腟の超音波の検査を補完するイメージです。また、毎年定期的に撮影することで、継時的に変化を追うことができます。
あとは経腟超音波の検査で痛みがある方などの場合、骨盤MRIを行うことで痛みなく骨盤の中の臓器を見ることができるといったメリットがあります。
婦人科の臓器に関しては、CT検査よりもMRI検査の方が優れているので、骨盤に関してはMRI検査になります。

【 インタビュアー 】
『ミレーナ®︎ 』を着けていると受診できないと聞きましたが、本当でしょうか?まずミレーナ®︎とは何かところからお願いします。

【 富里先生 】
ミレーナ®︎(IUS)は、子宮の中に挿入をする避妊用の器械になります。ミレーナ®︎は小さなプラスチックの棒のような形状で、薬がついています。生理痛や生理の量などの緩和にとても効果があると言われています。
ミレーナ®︎はプラスチックがメインなので、ミレーナ®︎を着けていてもMRIを撮ることができますが、子宮内避妊具(IUD)の種類 によっては金属、銅が付いているような商品もあるので、あらかじめ医師に相談してください。

「骨密度測定検査」の内容と分かること

【 インタビュアー 】
骨密度測定検査では何を目的にどのような検査をおこないますか。

【 富里先生 】
骨密度の検査は、骨がもろくなってしまって骨折を引き起こしてしまう病気の『骨粗鬆症』のための検査です。微量のX線を用いて約5分程度、ベッドに仰向けに寝た状態で検査します。当院では微量のX線を用いた二重エネルギーX線吸収測定法っていうDXA法(デキサ法)といったものを用いていて、腰椎と大腿骨の骨密度を測定しています。

【 インタビュアー 】
レディースドックのメニューに入っているのですが、これは男性には行わないのでしょうか?

【 富里先生 】
男性が骨密度を測定されることはもちろんいいとは思いますが、骨粗鬆症という病気は圧倒的に女性が多い病気です。ですので、レディースドックとして積極的にやっています。

なぜ女性に骨粗鬆症が多いのかというと、骨密度は女性ホルモンに大きく影響されるためです。更年期で閉経して、女性ホルモンが低下してくると、骨密度も急激に下がっていきます。60代ぐらいの方の場合、4人に1人ぐらいは骨粗鬆症と診断されると言われています。

若いうちは「関係ない」と思いがちですが、若いときに十分高い骨密度を作っておけば、閉経後に低下しても骨粗鬆症にならないレベルに収まると言われています。若いうちに骨密度を測定して、十分な骨量が出るということを意識することで、将来の骨粗鬆症のリスクが避けられます。

【 インタビュアー 】
いま「作っておく」とおっしゃいましたが、食事の内容が大切なのでしょうか?

【 富里先生 】
そうですね、食事と運動。運動で骨に多少刺激を与えてあげると、骨密度をしっかり作る原因に、骨密度が高くなる原因になります。食事でしっかり摂取することと、あと運動することが大切です。

女性は妊娠して出産をするときに、骨のカルシウムを多く使います。そこで少し骨密度が下がってしまう方もいらっしゃいます。骨に必要なカルシウムやビタミンDなどを摂取することで、適正な数値まで引き上げることは可能です。

【 インタビュアー 】
たとえば40代後半からエストロゲンの値がどんどん下がって来て、閉経に向かっていく時は、骨密度がどんどん下がっていくイメージですが、そこからでも数値を戻していくことは可能でしょうか?

【 富里先生 】
骨密度に対するお薬、骨粗鬆症に対するお薬もありますので、骨密度が下がってしまう場合はそれ使うこともあります。日常生活や運動習慣によって、ある程度下がるのを遅らせることができます。あとは、更年期症状でよく行う、ホルモン補充療法です。それに関しても、骨密度を上げる一番のお薬と言われています。

【 インタビュアー 】
ありがとうございます。ここまで人間ドックと婦人科検診についてお話をお聞きしてきましたが、女性が将来妊娠を希望するなら受けておくべき検査があれば教えていただけますか。

【 富里先生 】
近年、妊婦さんの低体重や低栄養なども問題になっています。妊婦さんの健康は赤ちゃんの健康に直結します。そういった意味でも毎年、健康診断を受け、生活習慣病のチェックをしておくべきです。

あとは、『クラミジア』や『梅毒』といった性感染症、『風疹』など、妊娠中に感染すると母子ともに影響のある感染症があります。妊娠前に感染の有無や抗体の有無を調べることは早めに治療やワクチン接種につながり、 妊娠中の感染を予防できます。あと、もちろん『子宮頸がん』と『乳がん』に関しても検査しておくといいと思います。

【 インタビュアー 】
では、人間ドック、レディースドックを受診する病院を選ぶ際のポイントを教えてください。

【 富里先生 】
人間ドックは一度受けたら終わりというわけではなく、定期的に受けることで予防効果が発揮されます。ですので、継続して受診できる環境にあるということが、施設を選ぶ重要なポイントだと思いますね。

具体的には、価格や施設の快適さも重要なポイントだと思います。あとは定期的に通うこと考えると、アクセスがしやすいことが大事だと思います。

あともうひとつ、人間ドックで異常が見つかった場合は、医療機関に受診しなければいけません。なので、その人間ドックの施設が適切な医療機関と連携をしていて、紹介できるかどうかというのも大切なポイントだと思います。

【 インタビュアー 】
では、慶應義塾大学病院の人間ドックの特徴を教えてください。

【 富里先生 】
当院の予防医療センターは、画一的な検査を行うのではなく、心身の状態や生活習慣など、おひとりおひとりに寄り添う対話を重視した人間ドックを提供しています。価値観に応じた『パーソナライズド・ドック』を目指しています。

大学病院の人間ドックですので、最新の設備や精度の高い検査を提供することができます。さらに問題があれば、大学病院で高度な医療を速やかに受けられることが、当院の特徴になるかなと思います。

【 インタビュアー 】
最後に、これから人間ドックを受ける方に向けてメッセージをお願いします。

【 富里先生 】
人間ドックや婦人科検診に対してハードルが高いと思っている方も多くいらっしゃると思います。ただ、生理などを含め、自分の体について何も問題がないと思っている方って、実は少ないのではないかと感じています。
「何か少し気になるところもあるけど、病院に行くまでもないかな」という時に、婦人科検診を受診していただくことで、何か見つかるかもしれません。また、より良い生活を送るために、日々の生活の中で出来るアドバイスを受けられたりもします。まずは気軽に1回、婦人科検診を、人間ドックを受けていただければと思います。

【 インタビュアー 】
今日はありがとうございました。

富里祥子 (とみさとしょうこ)先生
慶應義塾大学病院 予防医療センター

慶應義塾大学医学部卒業
初期臨床研修修了後、慶應義塾大学医学部産婦人科学教室に入局。
慶應義塾大学病院の他、ライフエクステンション研究所附属永寿総合病院、静岡市立清水病院で勤務。
現在、慶應義塾大学病院予防医療センター助教。
小中学生3人の子育て中。
日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医