皆さんは、私のコラムを読んでくださっている方ですので、妊娠適齢期がいつであるか、また、ライフプランをどのように立てたらいいか、ご理解していると思います。
もしあなたが、若い方でしたら、余裕をもって、妊娠適齢期に妊娠・出産・育児など、ご自分の考えるライフプランを今後立てていかれることと思います。
しかし、すでに妊娠適齢期よりは高齢になっておられる方は、とても心配になり、また、自分が妊娠適齢の知識を得る機会を与えてくれなかった社会に対して、また、知識は得ていても、社会制度がライフプランを実行に移すに足る環境になっていなかったことで妊娠適齢期を過ぎてしまったことに対して怒りのような感情をいだく方もおられると思います。

このような方のために、今回からどの年齢でも今から取り組める妊活についてお話したいと思います。もちろん年齢が高齢になるほど、妊娠する能力は低下することは否めませんが、各年齢の自分の持っている妊娠する能力を100%活用するための妊活です。

体重は妊娠するまでの期間に影響がある!?

まず初めに、体重についてお話しましょう。
皆さんは、体重が重いとスタイルが悪くなると思って、気にされている方も多いと思います。
でも、それ以外にも健康面で、いろいろな病気の発症を増やすこともご存知のことと思います。
体重は自分の努力で何とか制御できる要因です。
今回お話する研究は、①体重と妊娠するまでにかかる時間の関係、②体重と妊娠中の児のリスクに関する研究です。

まず、①体重と妊娠するまでにかかる時間の関係ですが、これはHassan MAMら(Fertility & Sterility, 2004; 81:384-392)が研究した論文で、健康に良くないライフスタイルが妊娠しようと頑張り始めてから、妊娠に至るまでにかかる時間にどのような影響を及ぼしたのかを研究しています。

体重を示す指標としてよくBMI( Body Mass Index=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m) )を用います。体重が重くても背が高ければ、健康ですので、この指標を用いて体重の影響を研究しています。図1をみてください。
妊娠までの期間が一番短いのはBMIが19-24のグループでした。それよりも低くても、高くても妊娠までの期間は長くなります。

体重は、妊娠中の赤ちゃんのリスクへの影響も!?

さて、次に②体重と妊娠中の児のリスクに関する研究についてお話しましょう。
これに関しては昔からたくさんの研究報告があります。
体重が重い母親では、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、血栓症の発症や分娩時の帝王切開の率が増える可能性があるといわれています。
一方胎児では、先天異常児や巨大児の発症率が高くなり、分娩時のアプガースコア(赤ちゃんの呼吸状態)が低値(悪い状態)になる可能性があります。
また、肥満の女性では流産や死産、また、出生後の新生児時期の死亡も増加すると報告されています。

今回ご紹介する研究(TennantP.W.G , Human Reproduction 26; 1501-1511,2011)は、北英国の研究で、BMI記載がある方で、多胎妊娠や検査で胎児が先天異常児であることがわかった方、妊娠前に糖尿病が診断されている方を除いた29,856人を対象にして、体重が胎児や新生児の死亡へどのような影響があるのかについて調査しました。

すなわち妊娠前に健康な女性で妊娠した胎児の数が単胎の妊婦さん、かつ妊娠中の超音波検査で胎児に先天異常が認められなかった妊婦さんにおいて、体重が妊娠分娩にどのような影響があるのかを調査した研究です。

図2をみてください、妊婦さんのBMIと胎児、新生児の死亡率との関係を示しています。これからもわかるように、BMIが23㎏/㎟ のところで胎児、新生児の死亡率一番が低くなっています。

これより、BMI の値が低くても高くても、死亡率は上昇しています。
この研究ではたくさんの患者さんのデータ(29,856人)を扱っていますが、健康な(Recommended)BMI(18.5-24.9)の方に比較し明らかに死亡率は上昇したのは肥満(BMI>30)のグループだけでした。

しかし、もっと多くの患者さんで研究ができたら、やせ(BMI<18.5)、太り気味(BMI:25-29.9)のグループでも、健康なグループに比較有意に上昇したと結論できると推測しています。

皆さんは、日ごろから、スタイルや健康の点から体重を気にしていると思いますが、この研究結果から、これから妊娠しようと考えていらっしゃる方では、健康な体重は、妊娠するまでにかかる期間、さらに妊娠中や出産後の赤ちゃんにもよい影響を与えることも意識して妊活に励んでいただければと思います。