7月25日(金)、1 more Baby応援団は「かぞくを、もうひとり」をテーマにしたシンポジウムを開催しました。
日本の少子化問題をさまざまな角度から考え、広く発信していきたいという想いから、異なる分野から3人のパネリストをお招きし、有意義な討論が繰り広げられました。
まずはじめに、厚生労働省 雇用均等・児童家庭局総務課の源河真規子氏が登壇し、行政が少子化対策のために実施している仕事と家庭の両立支援の取り組みのうち、シンポジウムのテーマ「かぞくを、もうひとり」に関する部分を紹介していただきました。
続いて、明治大学政治経済学部教授の安藏伸治氏より「なぜ少子化が起きたのか」について「未婚化・晩婚化・晩産化の問題点」というテーマによる講演がありました。
その後、NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也氏に加わっていただき、パネルディスカッションを行いました。
最初のトピックは「2人目の壁」について。
約76.7%※1の既婚者が「理想の子どもの数は2人以上」と考えているにも関わらず、2人目の壁が存在すると答えた人は70.8%※2という現状があります。(n=2961)
理由は経済的なことがダントツのトップ、次に年齢や1人目で手いっぱいなどが続きます。
これについて「少子化は近年の晩婚化・晩産化が大きな要因」と統計データをもとに分析したのが明大・安藏氏です。「男女ともに未婚者が増え、晩婚化も進んでいる。出生率を上げるためには、すでに子どもを持つ人たちへの支援ばかりではなく、20代の早いうちに結婚して、20代の後半には第一子を産まないと、多産が実現しにくい」と持論を展開。
厚労省・源河氏からは、両立支援におけるさまざまな国の支援制度についてご説明いただきました。さらに、「制度が整っても、実際に育児をしやすい雰囲気であるとか、育休をとりやすい雰囲気ができないとなかなか子どもをもう一人とはならない。仕事もバリバリやりながら子育てを楽しむという方が増えてきていると感じてますが、そのような雰囲気ができてくれば、少子化改善に役立つのでは」と発言。
FJ・安藤氏は、2人目の子育ての大変さは1人目の1.65倍という調査結果をに対し「パパがもっと子育てに関与すればもっともっと楽になる。FJ会員のパパの育休取得率は40%」とパパの積極的な育児参加が、2人目の壁の解消策の1つになるのではないかと述べました。
2人目の壁の主な理由になっている「経済的なこと」を解消するためには、安心して共働きできる環境が大事です。そのためには「仕事と家庭の両立」が必要ですが、これを支える要素のひとつがママ友・パパ友の存在です。しかし、私たちの調査ではなんとパパの6割はパパ友がおらず、子ども1人を持つママの4分の1がママ友がいないという回答でした。この現状に対し、いかにママ友・パパ友がいることが心強いかを語ってくれたのはFJ・安藤氏と厚労省・源河氏。
お二人とも東日本大震災では、すぐにお子さんのもとへ駆けつけることができず、ママ友・パパ友に助けられたとのこと。ほかにも「出身や年齢が大きく違っても、子どもの年齢が一緒というだけでカジュアルに話せ、仕事とは違った人間関係が築ける」(源河氏)、「現代の子どもは大人の男性と触れ合う機会が少ない。パパ同士が楽しく話せる関係を見せることは社会教育にもなる。子どもは家庭だけでは育たないんです」(安藤氏)と様々な体験談を語ってくれました。
次に「子育てしやすい町や国を実現するために個人・企業・行政ができることはないか?」についても議論しました。
明大・安藏氏は「未婚率が高くなると、子どもと接する機会がない人も増える。子育て世代との関わりがない層は、大変さに思いを馳せられないのでは?」「会社が第一と考える企業トップがまだまだ多い。働くのは家族のためという欧米的な考え方に切り替えて、お父さんを夜7時には家に帰さないと(笑)。技術的には在宅ワークなど共働きしやすくできる方法はいくつもあるが、実現しているのはわずか」と問題を提起。
FJ・安藤氏も区長自らが育休を取得するなど、育休取得しやすい環境づくりを積極的に行っている文京区の事例を紹介し「行政や企業のトップやボスが変われば社会は変わる」と、最近注目されているイクボス(=育児中の部下のワークライフバランスに配慮し応援しつつ、組織の業績もアップさせられる上司のこと)の重要性にも触れ、少子化や2人目の壁解消への取り組みは社会全体の問題でもあることを私たちに再認識させてくれました。
「かぞくを、もうひとり」について話し合った第1回のシンポジウム。このほかにもさまざまな話題がありましたが、改めて感じたのは行政や企業が、今後更に充実した子育て支援制度や仕組みを整えることも大切ではありますが、制度のみならず、周りの人が、その制度や仕組みの利用を容認・推奨する環境づくりが一層大切なのではないでしょうか。
最後に、貴重なお話をいただいた源河真規子氏、安藏伸治氏、安藤哲也氏にお礼を申し上げます。
ありがとうございました!