照英さんといえば、テレビ番組の中で感動し、男泣きする姿が印象的です。その姿から、“情に厚い”というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。そんな照英さんにとって、3人の子どもと妻・和加子さんとの家族時間はかけがえのないものです。照英さんは次のように言います。
「家は僕の宝箱。僕は家に帰ったら嫌いなものがないという生活がしたいと願っていました。家に帰って嫌いなものがあったら捨てるじゃないですか。だからぜんぶ好きなものだったらいいなって。その中心に家族がいる、みたいな。今は、宝箱のような楽しいものを、子どもたちからも、妻からもプレゼントしてもらえた僕は、幸せだなってよく思っています」
今回は、そんな幸せいっぱいの家族の時間について、詳しくお話を聞いていきます。
親子5人、同じ寝室で寝るために「ベッドを特注した」
──多方面で活躍している照英さんですので、生活リズムも不規則になりがちかと思います。その中でどんなふうに子どもたちとの時間を確保しているのでしょうか?
「ひとつは、同じベッドで寝る、同じ寝室で寝るということは、結婚当初から3人目の子どもが生まれた今に至るまで、変わらないことです。最初は1つのベッドに夫婦で寝ていて、そこに犬が加わり、長男が加わり、長女、次女とどんどん増えていきましたね。寝室を別にするというのが、僕は嫌だったんです。よく世間では、寝室を別にしないと仕事に支障をきたすとか言いますよね。だったらその逆をやってみたらどうなるの? 本当にできないの?って思ったところもあって」
──確かに寝室が1つなら、自然と家族が同じ時間を過ごすことになりますよね。赤ちゃんと一緒に寝ることについては、すぐに慣れましたか?
「正直、最初は無理やり寝ていたところもあります。『夜泣きってやっぱりうるさいなー』って思ったこともありました。だけど、毎日一緒に寝ていると、不思議なもので慣れてくるんですね。そして、これも子育ての一つなんだなって感じたんです。それで心がすごく楽になりました。
うちは13畳くらいの広めの部屋があるんです。そこが寝室なんですが、ダブルベッドを2つドカンと置きました。普通だとライトとか化粧台とかを置くために、半端なスペースをつくったりするじゃないですか。でもそういうところも全部無しにして。ベッドを壁際に寄せて余った分のスペースにもベッドを置いています」
──5人で寝るとなるとダブルベッド2つにシングルベッド1つということですか?
「実は、その余ったスペースは、既製品のベッドではあてはまらなかったんです。そこで、群馬県に穂盛〈ほたけ〉というオーダーメイドでベッドをつくってくれる家具屋さんがあって、そこに『何センチの高さと幅で、マットが何センチのもの』という具合に電話で特注しました。だからその部屋は全面ベッドになっていて。5人全員で寝ています。もちろんインフルエンザにかかったときとかは別ですけど、それ以外は全員で毎日寝ています。それはもう自分の中でテーマというか、それが嫌なら、子どもをつくらなければよかっただろうって、それくらいの気持ちでいるので。僕がベッドを特注するって言ったときには、妻は呆れていましたけど(笑)」
家庭の習慣は他人の目を気にすることなく「自由」でいい
──毎日、布団の取り合いになりそうですね(笑)
「そうですね。布団も1人1個ではなくて、ダブル用を3つドカン、みたいな感じなので。毎日、誰かがどっかの布団に入っていく。子どもって寝相が悪いじゃないですか。だから布団を引っ張られたら引っ張り返すみたいな、そんな状態でみんな寝ていますね。普通はそんなふうに寝ないのかもしれないけれど、うちはうちで、やるのは自由じゃないですか。だから好きにやっているというか。子どもも大きくなってきたので、もしかしたら『お前んち、みんなで同じベッドで寝てるの?』って言われるかもしれないですけど、それは別に気にしていないというか。お風呂の入り方にしても、うちはちょっと独特で、それもまわりのことは気にせず続けています」
──どんなお風呂の入り方なんですか?
「贅沢かもしれないんですけど、朝と晩に両方ともお風呂に入るんですよ。それって自分と妻の独身のときからの習慣で、朝早く起きたら、風呂に入って頭と体を洗うんです。スポーツとかしていると、朝練とかしたらシャワーを浴びるじゃないですか。そんな感じです。その延長で、うちの子どもも朝起きたら風呂に入れさせられ続けています。ただ、僕と妻の習慣だっただけなんですけど、子どもたちにはその理由がわかっていなかったみたいで、学校でお風呂の話題になったときに、子どもが『朝お風呂に入ると気持ちいいよね』って言ったら、みんな『え、朝風呂に入るの?』って固まったらしくて(笑)。家庭の習慣で、当たり前って思っていることってありますよね。でも、実は別の家庭では当たり前ではなかったり、地方によっても違いがあったりします。だから、基本的に何かの常識に縛られることはなくて、お互い『すげえな』って思えるものが増えていけば、楽しいことが増えますよね。それでいいと思っているんです」
ママや家庭を明るくするために照英さんがしていること
──照英さんなりに持っている家庭のルールはありますか?
「妻が男っぽくて、片付けがあんまり得意じゃないところがあります。使った食器が一晩そのままだったりとか、そういうことがあって、僕はどちらかといえば片付けてしまいたい派なんです。で、僕が先に片付けたりすると、『後で私の時間で、私のペースでやるから』って言われるんですね。だから、そこは相手の性格を理解して、ぶつからないように気をつけています。
やっぱり、夫婦は自分の兄弟親子じゃないから、暗黙の了解でOKみたいなのは難しいと思っているので、家庭のルールをつくって、『ここはこうする』とか『ここは言わないようにする』とか決めないとダメだと思っています。なぜなら、さきほどの例ならば、後でやるという妻自身のペースがあるということがわかったので、今は『言わない』というルールを持っています。妻にはひまわりのように明るく元気でいてほしいんです。なぜなら妻が笑っていれば、子どもたちも笑って過ごせるから。そういう雰囲気をつくるのは僕の役割だと思っているので、努力しています」
──確かにママやパパが笑っていると、自然と家庭が明るくなりますよね。他にもなにか工夫していることはありますか?
「妻の実家は福島で、温泉どころに囲まれているんです。そういう土地で生まれ育ってきたので、結婚したときに『これだけは譲れないってことある?』って聞いたら、『温泉に入り続けたい』って言ったんですね。東京周辺で身近な温泉って言ったら箱根とか熱海とかですよね。それで、子どもが生まれるまではよく2人で温泉旅行に出かけました。でも、子どもたちが生まれてくるなかで、どうしても温泉って縁遠くなるじゃないですか。だから最近は『スーパー銭湯』を活用するようにしています。
朝9時からお昼過ぎの2時とか3時まで、上の子たちは学校、一番下の子を僕が面倒を見るから、その間にスーパー銭湯に行って、ゆっくりしてきてって。1ヵ月に1回とか2回とか、そういう時間をつくる努力をしています。スーパー銭湯って、実はけっこう充実していて、アカスリがあったり、いろんな種類のお風呂があったりするので、リラックスできるみたいで、帰ってきたときの妻の顔を見ると、晴れ晴れしています。あとは3〜4ヵ月に1回は、家族全員で温泉旅行に行ってます。土日を使ったりして」
「お父さんの得意料理」は持つべき
──スーパー銭湯に温泉旅行、とてもいいですね! 普段の料理についてはどうですか?
「昔はよく僕も料理をしていました。最近は妻がガーッて効率よくつくっちゃうので料理する機会が減りました。やっぱり子どもが3人となると、効率よくというところも大事なので。ただ、日曜とか自分が休みの日とかで、子どもたちも休みだったりすると、僕がチャーハンとかハンバーグとかをつくったりすることはあります。料理自体は好きなので、楽しんでつくっています。
独身の頃とかもよく料理はしていて、仕事の役に立ったこともありましたけど、それ以上に今、“お父さんの得意料理”を子どもたちに披露できるのがうれしいですね。これだけはお父さんがつくったら美味しんだよねってものを持っておくことは、ほかのお父さんたちにも推奨したいですね。子どもの将来のためにもなると思いますし。うちは、パパのチャーハンはすごく美味しくて、ママもかなわないってなっています」
──子どもの将来のために、という言葉がありましたが、他にも子どもの将来のためにしていることはありますか?
「子どもの将来のためでもあるし、僕たち夫婦の今のためでもあるんですが、兄弟仲良くしてほしいってことと、上の子を尊敬してほしい、敬ってほしいということがあります。親としても、『お兄ちゃんを見本にして、同じことをしていたらいいんだよ』って言えるような子育てを目指しています。そうすることによって、自分たちがあまりガミガミ言わなくて済むようにもなります。でも、まだぜんぜん出来ていないんですけどね。お兄ちゃんのことが好きと妹は言ってますけど」
口出しをしないほうが“のびのび”と習い事に取り組める!?
──具体的な話になるのですが、習い事はやらせていますか?
「長男については、水泳をやっています。平泳ぎさえできるようになれば、あとは大丈夫だからやめていいよっていうくらいのスタンスだったんですが、楽しくなっちゃったみたいで、バタフライやメドレーまでやっています。『いつやめていいよ』って言ったら、むしろどんどんハマっていったみたいな感じです。
ただ、習い事については少しむずかしいものも感じています。先日も夫婦でずっと話していましたけど、自分たちがやらせたいものにはぜんぜん子どもは興味を持ってくれなかったり、逆にやらせたいと思ってなかったことに興味が向いたり。僕は水泳の他に野球もやっていました。書道や公文も、親に言われてやってましたけど、やっぱりちょっと野球をやってほしくて。それで、少年野球に入れたらすぐ『やりたくない、面白くない』って。なぜかと言うと、たぶん僕自身がやっていたので『投げ方はこうだ、キャッチはこうだ』っていろいろ言い過ぎたんだと思います。家の前でキャッチボールとかはしますけどね。長男はテニスもしていますが、僕はテニスのテの字もわからないシロウトで(笑)。あと、学校で吹奏楽をやっているらしくて『僕、トランペットやってるんだ』って言っててちょっとびっくりしました。僕はスポーツマンでしたから、『ええ!?』ってなって。
子どもは思ったようには育たないなって感じています。でも、それがダメだってことではなくて、そこは子育ての難しさでありながら面白さでもあるなって、日々思うんです。とにかく、あんまり口出ししないのが、いちばん子どもがのびのびできのかなって、逆に子どもから教えてもらっているような感じです」
──最後になりますが、照英さんにとって、家族とはどういうものでしょうか?
「とにかく楽しめるもの。楽しいもの。趣味といったら誤解を生むかもしれないけど、それに近くて、楽しいことを発見できるものです。家は僕の宝箱だと思っています。そもそも楽しくなかったら入り込めないですよ。楽しいと思うことが、子育ての第一歩だと思います。
そして、マニュアルに従うのではなく、自分たちができる範囲で、できることをまずやる。それが素晴らしい子育てにつながっていくんじゃないかなって思います。
とにかく、せっかくの子育てなので楽しまないともったいない。まわりの新米パパとかによく言うのは、子育てをやってみて、楽しいってことを知ったもん勝ちだよってこと。照れとか、『俺はいいよ、それは女の人の仕事だろ』ってそういう気持ちを持つことは絶対にやめたほうがいいと思うということ。だってもったいないかた。こんなに楽しいのに。
そういうパパが、もし3年とか5年経って、子どもが大きくなってきたときに、『やっぱりお前は男の子だから、俺の後についてこい!』なんて言ってサッカーを教えようとしたり、アウトドアに連れ出したりする人もいるかもしれないけど、そんな急には子どもは付いてこないと思います。だから、そういうときに後悔しないためにも、今のうちからまず一歩を踏み出してみる。そして、子どもの今日の顔を大切にしてほしいなって思っています」
前編と後編の2回にわたってご紹介した照英さんのインタビュー、いかがでしたでしょうか? 照英さんの子育てへのこだわりや、家族の考え方、奥さまへの優しい気遣いなどが伝わってきましたね。いかにも情に厚い照英さんらしいコメントやエピソードにあふれていました。特に照英さんが仰っていた、「自分たちのやり方で、無理のない範囲で楽しむ」というのは、とてもいい言葉だなと感じました。貴重なお時間をありがとうございました!